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もしかして「うつ病」?心のサインを見逃さないで。症状・原因・治療法を解説

「最近、なんだか気分が晴れない…」 「今まで楽しめていたことが、楽しいと感じられない…」

誰にでも気分の浮き沈みはありますが、そのような状態が長く続いている場合、それは単なる「気分の問題」ではなく、「うつ病」という病気のサインかもしれません。

うつ病は、精神的、身体的なエネルギーが低下し、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。決して特別な人がなる病気ではなく、生涯に100人いれば6人程度が経験すると言われており、誰にでも起こりうる、ごく身近な病気なのです。(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット)

うつ病のサインに気づき、正しく対処するために知っておきたい症状、原因、そして治療法について、詳しく解説していきます。

1. これってうつ病?主な症状をチェック

うつ病の症状は、心の不調だけでなく、体の不調としても現れるのが特徴です。もし、以下のような症状が2週間以上、ほぼ毎日続いている場合は、うつ病の可能性があります。

こころの症状

  • 抑うつ気分:気分が落ち込む、憂うつ、悲しい、絶望的な気持ちになる。
  • 興味・喜びの喪失:これまで楽しめていた趣味や活動に対して、全く興味がわかなくなる、何をやっても楽しいと感じられない。
  • 思考力・集中力の低下:考えがまとまらない、決断ができない、仕事や勉強に集中できない。
  • 意欲の低下:何かをしようという気力がわかない、億劫に感じる。
  • 自責感・無価値感:「自分はダメな人間だ」「周りに迷惑をかけている」など、自分を過度に責めてしまう。
  • 希死念慮:消えてなくなりたい、死にたいと考えてしまう。

からだの症状

  • 睡眠障害:寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)、逆に寝すぎてしまう(過眠)。
  • 食欲の変化:食欲が全くなくなる(食欲不振)、または逆に食べ過ぎてしまう(過食)。それに伴う体重の減少または増加。
  • 疲労感・倦怠感:十分休んでも疲れがとれない、体が重く、だるい。
  • 体の痛み:頭痛、肩こり、腰痛、胃の不快感など、原因のわからない体の痛みや不調。
  • 動悸・めまい・息苦しさ

これらの症状は、午前中に特に強く現れ、午後になると少し和らぐ「日内変動」が見られることもあります。

2. なぜ、うつ病になるのか?考えられる原因

うつ病のはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、一つの原因ではなく、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

脳内の神経伝達物質の不調

私たちの脳内では、セロトニンやノルアドレナリンといった「神経伝達物質」が情報のやり取りをしています。これらの物質は、感情や意欲をコントロールする重要な役割を担っています。

うつ病の患者さんの脳では、何らかの原因でこれらの神経伝達物質の働きが悪くなり、情報伝達がスムーズに行かなくなっていることが分かっています。これが、気分の落ち込みや意欲の低下といった症状を引き起こすと考えられています。

ストレスなどの環境要因

  • ライフイベント:死別、離別、失業、経済的な問題、病気など、つらい出来事。
  • 人間関係のストレス:職場、家庭、学校などでの人間関係の悩み。
  • 過労:長時間労働や過度なプレッシャー。
  • 環境の変化:引っ越し、転職、昇進など、喜ばしい出来事であっても、大きな変化はストレスとなり得ます。

性格傾向(なりやすい気質)

うつ病になりやすい性格傾向として、以下のようなものが挙げられます。

  • 真面目で責任感が強い
  • 完璧主義
  • 凝り性
  • 人あたりが良く、他人に気を遣いすぎる

このような性格の人は、ストレスを一人で抱え込みやすく、うまく発散できない傾向があります。

3. うつ病の治療法:「休養」「薬物療法」「精神療法」

うつ病は、精神力や気合で治るものではありません。適切な治療を受けることで、回復することができる病気です。治療の基本は、「休養」「薬物療法」「精神療法」の3つの柱です。

① 十分な休養

うつ病の治療で最も大切なのが、心と体をしっかりと休ませることです。脳のエネルギーが枯渇している状態なので、まずはエネルギーを充電する必要があります。

可能であれば、仕事や学校を休み、家事なども最低限にして、安心して休める環境を整えることが重要です。

② 薬物療法

薬物療法では、主に「抗うつ薬」が用いられます。抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質のバランスを整えることで、うつ症状を改善する効果があります。

現在主流のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)は、副作用が比較的少なく、安全性が高いとされています。

【重要】

  • 薬の効果が現れるまでには、通常2〜4週間かかります。
  • 自己判断で薬の量を調整したり、中断したりしないでください。症状が悪化したり、再発のリスクが高まったりします。必ず医師の指示に従ってください。

その他、症状に応じて、睡眠薬や抗不安薬などが処方されることもあります。

③ 精神療法(カウンセリング)

精神療法は、専門家との対話を通して、物事の受け止め方や考え方の偏りを修正したり、ストレスへの対処法を身につけたりすることを目指す治療法です。

代表的なものに「認知行動療法」があります。これは、うつ病に陥りがちな悲観的な考え方のパターンに気づき、より現実的で柔軟な考え方ができるようにサポートしていく方法です。

薬物療法と精神療法を組み合わせることで、より高い治療効果と再発予防効果が期待できます。

さいごに:一人で抱え込まず、専門機関に相談を

うつ病は、早期に発見し、適切な治療を開始することが、回復への一番の近道です。

もし、あなた自身やあなたの周りの人が「もしかして?」と感じたら、決して一人で抱え込まず、精神科や心療内科などの専門機関に相談してください。

当院でも、うつ病に関するご相談や治療を行っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。