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それは単なる気分の波?双極性障害(躁うつ病)の症状・原因・治療法を解説

「最近、気分が高揚して元気すぎる気がする…」

「急に何もかも嫌になり、ひどく落ち込んでしまう…」

このように、気分の浮き沈みが激しいと感じていませんか?それは、単なる気まぐれな「気分の波」ではなく、「双極性障害(躁うつ病)」という病気のサインかもしれません。

双極性障害は、気分が異常に高揚する「躁状態」と、気分がひどく落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。適切な治療を受けずに放置すると、社会生活に大きな支障をきたすだけでなく、最悪の場合、自殺に至るリスクも高まります。

この記事では、双極性障害の早期発見と適切な対処のために、その症状、原因、治療法について詳しく解説します。

1. 双極性障害の主な症状:躁状態とうつ状態

双極性障害の最大の特徴は、躁状態とうつ状態という、正反対の気分の波を繰り返すことです。それぞれの状態の症状を見ていきましょう。

躁状態の症状

気分が高揚し、活動的になる状態です。一見すると「元気」や「調子が良い」ように見えますが、その背景には病的な変化があります。

  • 気分の高揚:非常に気分が良く、自信に満ち溢れている。※時には、非常にイライラし、怒りっぽくなる場合もあります。
  • 活動性の増加:じっとしていられず、エネルギッシュに動き回る。睡眠時間が短くても平気。
  • 多弁・観念奔逸:次々とアイデアが浮かび、早口でしゃべり続ける。
  • 注意散漫:一つのことに集中できず、次々と注意が移ってしまう。
  • 自己評価の肥大:自分は特別な人間だと感じ、根拠のない万能感を持つ。
  • 浪費や無謀な行動:高価な買い物を衝動的にしたり、無謀な事業に手を出したりする。

こうした躁状態の症状が軽度で、日常生活に大きな支障がない場合は「軽躁状態」と呼ばれます。しかし、本人にとっては「絶好調」に感じられるため、病気だと自覚しにくいのが特徴です。

うつ状態の症状

躁状態の後に訪れる、気分がひどく落ち込む状態です。一般的なうつ病の症状と類似しています。

  • 抑うつ気分:気分がひどく落ち込み、憂鬱な気持ちが続く。
  • 興味・喜びの喪失:これまで楽しめていたことに対し、全く興味がわかなくなる。
  • 疲労感・倦怠感:体がだるく、何もする気力が起きない。
  • 睡眠障害:寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早くに目が覚めるなど。
  • 食欲の変化:食欲がなくなる、または過食になる。
  • 集中力や思考力の低下:考えがまとまらない、決断ができない。
  • 自責感:「自分が悪い」と自分を責め続けてしまう。

2. 双極性障害の種類

双極性障害は、躁状態の程度によって大きく2つのタイプに分類されます。

  • 双極Ⅰ型障害:はっきりと他者から見てわかるほどの**「躁状態」とうつ状態**を繰り返すタイプです。躁状態の期間には、入院が必要になるほど重症化することがあります。
  • 双極Ⅱ型障害:重い躁状態にはならず、「軽躁状態」とうつ状態を繰り返すタイプです。軽躁状態は本人が「調子が良い」と感じるため、周囲も病気だと気づきにくく、うつ病と誤診されることも少なくありません。

3. なぜ、双極性障害になるのか?

双極性障害の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的な要因や、脳内の神経伝達物質の不調が関係していると考えられています。特に、気分や意欲を調節するドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンといった物質のバランスが崩れることが、躁状態やうつ状態を引き起こすと考えられています。

ストレスや生活リズムの乱れが、気分の波の引き金になることも多いです。

4. 双極性障害の治療法:薬物療法が中心

双極性障害は、うつ病とは異なり、抗うつ薬のみを単独で使用すると、かえって躁状態を悪化させるリスクがあるため、専門医による慎重な診断と治療計画が必要です。治療の基本は、以下の通りです。

① 薬物療法

気分の波を安定させることが治療の最優先事項です。

  • 気分安定薬:リチウム、バルプロ酸、ラモトリギンなど、気分の波をコントロールし、躁状態とうつ状態の再発を予防する中心的な薬です。
  • 非定型抗精神病薬:躁状態が激しい場合や、気分安定薬の効果が不十分な場合に併用されます。
  • 抗うつ薬:うつ状態が重い場合に、気分安定薬と併用して短期間使用することがありますが、単独での使用は原則として避けられます。

これらの薬を服用することで、気分の波を穏やかにし、安定した日常生活を送ることを目指します。

② 精神療法(心理教育)

双極性障害は、病気に対する正しい知識を身につけることが非常に重要です。

  • 心理教育:患者さん自身やご家族が、双極性障害とはどのような病気か、どのような治療が必要か、どうすれば再発を防げるかなどを学びます。
  • 認知行動療法:気分の波に影響を与える思考パターンや行動パターンを修正し、ストレスへの対処法を身につけます。

さいごに:まずは専門機関にご相談を

双極性障害は、適切な治療を継続すれば、病気と上手に付き合い、安定した社会生活を送ることが可能です。しかし、症状に気づき、診断を受けるまで時間がかかることも少なくありません。

もし、「自分は双極性障害かもしれない」と感じたら、一人で悩まずに精神科や心療内科にご相談ください。当院でも、双極性障害に関する専門的な診断と治療を行っております。どうぞお気軽にお問い合わせください。