傷病手当金
病気やケガで仕事を休むことになった際、ご自身とご家族の生活を支えるための公的な保険制度が「傷病手当金」です。以下によくある質問をまとめました。
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傷病手当金とはなんですか?条件は?
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傷病手当金は、業務外の病気やケガで4日以上連続して仕事を休んだ場合に、給与の代わりとして健康保険から支給される制度です。
対象となる条件
①健康保険の被保険者である(主に会社員)
傷病手当金が支給されるのは、全国健康保険協会(協会けんぽ)または組合管掌健康保険(組合健保)であり、国民健康保険(市町村国保)では、原則として傷病手当金は支給されません(国民健康保険組合については、組合ごとに異なります)。
②仕事以外の病気やケガで仕事を休んでいる(業務上のケガは労災保険の対象)
③連続する3日間を含め、4日以上仕事を休んでいる
④休んでいる間、給与の支払いがない(一部支給がある場合は調整される)
あなたが働けなくなった時、加入している健康保険から、お給料の代わりにお金が支給され、安心して治療に専念できるよう助けてくれます。ただし、この制度には大切なポイントがあります。
【この制度を使える人】
- 会社員や公務員など、お勤め先の健康保険(協会けんぽ、組合健保など)に入っている人。
【この制度を使えない人】
- 自営業、フリーランス、学生など、「国民健康保険」に入っている人。 (※国民健康保険には、基本的にこの傷病手当金の仕組みはありません)
つまり、「勤め先の健康保険に入っている人のための制度」と覚えておくと分かりやすいです。
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お金はいくらもらえますか?
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ざっくり言うと、1日あたり「今もらっているお給料の約3分の2」です。
【傷病手当金の計算式】
(支給開始前の過去12ヶ月の給与を平均した額)÷ 30日 × 2/3 = 1日あたりの支給額
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お金は休んでいるあいだの分がもらえる?
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いいえ、休み始めてから最初の3日間はもらえません。
この最初の3日間を「待期期間(たいききかん)」と呼びます。この3日間は連続で休む必要があり、土日や祝日、有給休暇を使ってもOKです。待期期間が終わった4日目以降の休んだ日から、傷病手当金が支給されます。
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どれくらいの期間もらえますか?
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支給が始まった日から、トータルで「1年6ヶ月」分です。
これは「通算(つうさん)」で計算されるのがポイントです。たとえば、半年間休んで一度仕事に戻り、その後また同じ病気で休むことになっても、残りの「1年分」の傷病手当金をもらうことができます。
また、この1年6ヶ月という期間は、同一の病気に対して「一生涯にもらえる期間」であるため、原則として、同じ病名で2度以上もらうことはできないのがほとんどです。
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仕事を辞めてからももらえますか?
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はい、条件を満たせばもらえます。
主な条件は2つです。
- 会社の健康保険に、退職日までに「1年以上」続けて入っていること。
- 退職した日に、傷病手当金をもらっているか、もらえる状態(連続3日+1日以上休んでいる状態)であること。
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お金は会社から出るんですか?
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いいえ、あなたが加入している「健康保険」から出ます。
全国健康保険協会(協会けんぽ)や、会社が独自に作っている健康保険組合(〇〇健康保険組合など)が支払います。会社が手続きの窓口になってくれることが多いですが、お金の出どころは健康保険です。
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申請の流れを教えてください(休職前後〜受給まで)
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以下の流れになります。
①受診
症状・勤務内容・困っている点を医師に具体的に伝えてください。当院では診療時の面接で現状を整理し、必要に応じて診断書・意見欄の作成に対応します(※発行可否や記載内容は医学的判断によります)。
②会社へ連絡(人事・総務)
会社の窓口(人事労務や総務などの部署)で、休職手続きとあわせて「傷病手当金支給申請書」の用紙・提出先を確認してください。協会けんぽの公式ページからダウンロードも可能です。教会健康保険組合
③申請書の記入
- 被保険者(ご本人)記入
- 事業主の証明(給与の有無 等)
- 医師の意見欄(療養状況・労務不能期間 など)
代理提出やマイナンバー関連の添付が必要な場合があります。
申請期間と労務不能と認めた期間は患者様と雇用主様で決めていただく期間となるため、ご受診前に確認してください。当院で記載できる期間は初診日以降となります。
④提出
協会けんぽの各支部へ。添付不足や記載不備があると差し戻しになることがあります。
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どの程度の期間ごとに申請すればよい?
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1ヶ月ごとに申請するのが一般的です。
法律で決まっているわけではありませんが、お給料の締日と同じように、月単位で申請すると会社も処理しやすく、生活費も定期的にもらえるので安心です。
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傷病手当金の金額が調整されるのはどんな時?
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傷病手当金は、あくまで「お給料がもらえない間の生活を支える」ためのお金です。
そのため、もし他のところから生活を支えるお金(給与や別の手当など)をもらっている場合、傷病手当金の金額が調整されたり、支給されなかったりすることがあります。1. 会社からお給料をもらっている場合
休んでいる間も、会社から給与が一部支払われるケースです。
- もらう給与が、傷病手当金より多い場合 → 傷病手当金は支給されません。
- もらう給与が、傷病手当金より少ない場合 → その差額分だけ、傷病手当金が支給されます。(=差額調整)
【確認すること】 就業規則などを確認し、休職期間中に会社から給与が支払われるかどうか、支払われるならいくらかを把握しておく必要があります。
2. 年金(障害年金・老齢年金)をもらっている場合
同じ病気やケガが原因で「障害年金」をもらっている場合や、退職後に「老齢年金」をもらっている場合です。
- 原則として年金が優先され、傷病手当金は支給されません。
- ただし、年金の額を360で割った日額が、傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額分が支給されます。
【確認すること】 もし障害年金や老齢年金を受給している(またはこれからする)場合は、その金額が傷病手当金と比べて多いか少ないかを確認する必要があります。
3. 他の制度から給付をもらっている場合
以下のようなケースでは、他の給付が優先され、傷病手当金はもらえません。
- 労災保険からの休業補償給付 :仕事中や通勤中のケガが原因の場合は、労災保険が優先されます。
- 出産手当金 :同じ期間に両方もらえる条件に当てはまった場合、「出産手当金」が優先されます。
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転院する場合はどうなりますか?
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転院しても、引き続きもらうことができます。
申請書の医師が書く欄に、転院前の病院と、転院後の病院の両方に証明を書いてもらう必要があります。少し手間が増えますが、手続きをすれば問題なく支給は続きます。
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傷病手当金用の診断書の料金はいくらかかるの?
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傷病手当金の書類を医師が記入する際には、文書作成料がかかります。これは保険適用なので、3割負担の方であれば、通常の診察料に加えて300円です。
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雇用保険(失業手当)と一緒にもらえますか?
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両方を同時にもらうことはできません。
目的が違うため、ルールがはっきり分かれています。
- 傷病手当金 → 病気やケガで「働けない」人のためのもの。
- 失業手当 → 「働ける」けれど、仕事が見つからない人のためのもの。
まずは傷病手当金でしっかり療養し、仕事を探せる状態になったら、失業手当の手続きに切り替えるのが一般的な流れです。
すぐ使える:申請前チェックリスト
参考
- 協会けんぽ「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」:制度全体、待期、金額、調整など。教会健康保険組合
- 協会けんぽ「よくあるご質問」:要件・待期・出産手当金との関係。教会健康保険組合
- 協会けんぽ「申請書(提出書類・本人/事業主/医師の記入欄、マイナンバー等)」:手続き詳細。教会健康保険組合
- 厚労省「支給期間の通算化(2022年改正)」:法改正の要点。厚生労働省
その他の制度・仕組み
- 自立支援医療
- 精神障害者保険福祉手帳
- 障害年金