障害年金

監修:三宮駅前こころのクリニック 副院長・精神保健指定医 近藤 大貴

うつ病や統合失調症、発達障害など、精神疾患を抱えながら生活や仕事に困難を感じている方の暮らしを経済的に支える公的制度として「障害年金」があります。

「精神疾患でももらえるの?」「いくらもらえるの?」「手帳とは何が違うの?」といった疑問をお持ちの方も多いかと思います。

神戸・三宮の心療内科・精神科である「三宮駅前こころのクリニック」では、障害年金の申請に必要な診断書の作成に対応しております。

このページでは、障害年金の制度や仕組みについて、よくいただくご質問にQ&A形式でお答えします。

障害年金とは、どのような制度ですか?

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に支障が出た場合に、現役世代の方も含めて受け取ることができる公的年金制度です。

「年金」というと、65歳から受け取る老後の年金(老齢年金)をイメージされる方が多いかもしれません。しかし公的年金には、病気やけがで一定の障害の状態になったときに支給される「障害年金」という仕組みも用意されています。

うつ病や統合失調症、発達障害といった精神疾患も対象に含まれており、精神障害者保健福祉手帳を持っていない方でも申請することができます。

「障害基礎年金」と「障害厚生年金」は何が違うのですか?

障害年金は、初診日(障害の原因となった病気について、初めて医師の診療を受けた日)にどの年金制度に加入していたかによって、「障害基礎年金」か「障害厚生年金」のいずれかが支給されます。

障害基礎年金

  • 対象になる方:初診日に国民年金に加入していた方(自営業・学生・専業主婦(主夫)など)
  • 等級:1級・2級

障害厚生年金

  • 対象になる方:初診日に厚生年金保険に加入していた方(会社員・公務員など)
  • 等級:1級・2級・3級・障害手当金(一時金)

初診日に厚生年金保険に加入しており、障害の程度が1級または2級に該当する場合は、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が支給されます。3級は、この上乗せ部分(厚生年金)のみに設けられた、やや軽い障害向けの等級です。

精神障害者保健福祉手帳と障害年金は、どう違いますか?

どちらも精神疾患を抱える方を支える制度ですが、目的も認定基準も異なります。

  • 精神障害者保健福祉手帳:税制優遇や公共料金の割引など、生活面でのサポートを受けやすくするための手帳です。
  • 障害年金:現金給付によって生活を経済的に支える制度です。

手帳を持っていなくても障害年金を申請することはできますし、逆に手帳を持っているからといって、同じ等級で障害年金が認定されるとは限りません。障害年金には独自の認定基準があるためです。

なお、すでに精神疾患を理由に障害年金を受給している方は、新たに診断書を用意しなくても、年金証書の写しなどを添えることで手帳を申請できる場合があります。この場合、手帳の等級は受給中の障害年金の等級にあわせて交付されるのが一般的です(自治体により手続きの詳細が異なることがありますので、お住まいの市区町村窓口にもご確認ください)。

精神障害者保健福祉手帳のくわしい制度については、精神障害者保健福祉手帳|制度と仕組みのページもあわせてご覧ください。

どのような精神疾患が対象になりますか?

障害年金の対象となる精神疾患は幅広く、代表的なものは次の通りです。

  • うつ病・双極性障害などの気分(感情)障害
  • 統合失調症
  • 発達障害(自閉スペクトラム症・注意欠如多動症〈ADHD〉など)
  • 知的障害
  • てんかん
  • 高次脳機能障害や認知症などの器質性精神障害

このほかの疾患についても、対象になるかどうかは診断名だけで決まるものではなく、症状の内容や経過をふまえて個別に判断されます。ご自身の症状について気になる点があれば、診察の際に主治医にご相談ください。

障害年金を受け取るための条件を教えてください

障害年金を受け取るには、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。

1. 初診日要件
障害の原因となった病気について、初診日に国民年金または厚生年金保険に加入していること(20歳前や60〜65歳で年金制度に加入していない期間も対象になる場合があります)。

2. 保険料納付要件
初診日の前日時点で、初診日のある月の前々月までの加入期間のうち、保険料納付済期間と免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。これを満たさない場合でも、初診日が65歳未満かつ令和18年3月末日までにあれば、直近1年間に保険料の未納がなければよいという特例があります。なお、20歳前に初診日がある場合は、この要件自体が問われません。

3. 障害認定日要件
「障害認定日」(原則として初診日から1年6か月を経過した日。それより前に症状が固定した場合はその日)の時点で、法令に定める障害の状態にあること。

3つすべてを満たして初めて受給の対象となります。特に保険料の納付状況に不安がある方は、早めに年金事務所で確認されることをおすすめします。

精神疾患の場合、「初診日」で注意することはありますか?

精神疾患は経過が長く、転院を重ねる方も多いため、初診日の考え方には注意が必要です。

  • 転院していても、初診日は一番最初に医師の診療を受けた日です。現在の主治医のもとに6か月しか通っていなくても、それ以前に別の医療機関を受診していれば、その受診日が初診日になります。
  • 診断名が経過の中で変わっても(たとえば「うつ状態」から「双極性障害」へなど)、同一の傷病として扱われるのが一般的です。
  • 発達障害(自閉スペクトラム症・ADHDなど)は、知的障害を伴わない場合、症状に気づいて初めて医療機関を受診した日が初診日となります。先天性の知的障害がある場合は、出生日が初診日として扱われます。

なお、初診の医療機関と診断書を作成する医療機関が異なる場合は、初診日を証明する「受診状況等証明書」を初診の医療機関から取得する必要があります。初診時からずっと同じ医療機関に通われている場合は、診断書のみで初診日を確認できるため、この証明書は不要です。

障害等級はどう決まりますか?働いていても対象になりますか?

精神疾患による障害等級は、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」と「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」にもとづき、診断書に記載された次のような内容を総合的に評価して判定されます。

  • 現在の病状や状態像
  • 療養の状況
  • 生活環境(一人暮らしか、家族と同居し支援を受けているか 等)
  • 就労状況

「働いていたら障害年金はもらえない」と思われがちですが、そうとは限りません。たとえば障害者雇用枠で周囲の配慮を受けながら就労している場合など、就労の実態によっては2級に該当すると判断されることもあります。大切なのは「働いているかどうか」そのものではなく、日常生活や就労の場でどのような困難を抱え、どのような支援を受けているかです。

診断書には、診察室で見えている状態だけでなく、自宅での様子や日常生活の困難さを具体的に反映してもらうことが重要です。気になる症状や困りごとは、あらかじめメモにまとめておくと診察時に伝えやすくなります。

障害年金はいくらもらえますか?【2026年度(令和8年度)】

年金額は毎年度見直されます。以下は令和8年4月分からの金額です(昭和31年4月2日以後生まれの方の場合)。

障害基礎年金

等級年額
1級1,059,125円+子の加算額月額換算 約88,260円+子の加算額
2級847,300円+子の加算額月額換算 約70,608円+子の加算額

子の加算額は、18歳になった後の最初の3月31日までの子(障害等級1級・2級の場合は20歳未満まで)がいる場合に加算され、2人までは1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円です。

障害厚生年金

厚生年金の加入期間や給与水準にもとづく「報酬比例の年金額」によって決まるため、金額は人によって異なります。

  • 1級:報酬比例の年金額 × 1.25 + 配偶者加給年金額(243,800円)
  • 2級:報酬比例の年金額 + 配偶者加給年金額(243,800円)
  • 3級:報酬比例の年金額(最低保障額635,500円)

※配偶者加給年金額は、生計を維持している65歳未満の配偶者がいる場合に加算されます。

このほか、障害基礎年金1級・2級の受給者で前年所得が一定基準以下の方には、「障害年金生活者支援給付金」(1級:月額7,025円、2級:月額5,620円)が上乗せされる制度もあります。障害年金は非課税所得のため、老齢年金のように所得税・住民税が源泉徴収されることもありません。

申請はどのような流れで進みますか?

一般的な流れは、次のとおりです。

  1. お近くの年金事務所や街角の年金相談センターに相談し、初診日と保険料納付要件を確認する(障害基礎年金のみの場合はお住まいの市区町村でも相談可能です)
  2. 初診の医療機関と診断書作成の医療機関が異なる場合は、「受診状況等証明書」を取得する
  3. 「精神の障害用」の診断書を医師に依頼する
  4. ご本人が「病歴・就労状況等申立書」を作成する
  5. 年金請求書に必要書類を添えて提出する
  6. 日本年金機構による審査(結果が出るまで数か月程度かかることがあります)
  7. 認定されると「年金証書」が届き、その後年金の支払いが始まります

書類の準備には時間がかかることも多いため、余裕をもって進めることをおすすめします。

診断書は誰に書いてもらえばいいですか?当院でも対応してもらえますか?

障害年金の診断書(精神の障害用)は、現在の症状だけでなく、日常生活の中でどのような支援が必要かを詳細かつ具体的に記載することが求められます。等級の判定はこの診断書の内容をもとに公的機関が行うものであり、医療機関が等級を決めるわけではありません。

当院でも、継続して通院されている方を対象に、障害年金用診断書の作成に対応しております。作成をご希望の際は、診察時に主治医へご相談ください。

なお、診断書の作成には自由診療の文書料がかかります。また記載する項目が多いため、通常の診断書よりお時間をいただく場合があります。あらかじめご了承ください。文書料のくわしい料金は診断書についてのページをご覧ください。

「事後重症請求」「遡及請求」とは何ですか?

障害年金の請求方法には、主に次の2つがあります。

  • 障害認定日による請求:障害認定日の時点ですでに等級に該当していた場合、認定日の翌月分から受け取れます。請求が遅れた場合でも、さかのぼって受け取れるのは時効により5年分が上限です。
  • 事後重症による請求:障害認定日の時点では等級に該当しなかったものの、その後症状が悪化して該当するようになった場合、請求した日の翌月分から受け取れます。この場合、65歳の誕生日の前々日までに請求する必要があります。

障害認定日の時点の診断書を取得できるかどうかで、どちらの請求方法になるかが変わってきます。

一度決まったら、その後もずっと受け取れますか?

障害年金には、症状の変化に応じて一定期間ごとに診断書(障害状態確認届)を提出する「有期認定」と、提出が不要な「永久固定」があります。多くの方は有期認定となり、1年から5年ごとに診断書の再提出が必要です。

提出期限を過ぎると、年金の支払いが一時的に止まってしまうことがあります。更新時期の案内が届いたら、早めに主治医へご相談ください。

学生や専業主婦(主夫)でも対象になりますか?

はい、対象になります。国民年金は20歳以上の方が加入する制度で、学生や専業主婦(主夫)の方も加入しています。保険料納付要件を満たしていれば申請できますし、初診日が20歳前にある場合は、そもそも保険料納付要件が問われません。

傷病手当金と障害年金は同時にもらえますか?

同じ病気やけがを理由に障害年金(または老齢年金)を受け取っている場合、原則として年金が優先され、傷病手当金は支給されません。ただし、年金の日額が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。くわしくは傷病手当金|制度と仕組みのページもご覧ください。

生活保護を受給していても申請できますか?

申請自体は可能です。ただし、障害年金を受給すると、その金額は収入として認定され、生活保護費の調整対象となります。くわしくは担当の福祉事務所にご確認ください。

審査の結果、不支給になったらどうすればいいですか?

決定に納得できない場合は、「審査請求」「再審査請求」という不服申立ての制度があります。再度申請し直すことも可能です。手続きが複雑に感じられる場合は、年金事務所のほか、障害年金を専門に扱う社会保険労務士に相談する方法もあります。

当院でのご相談について

障害年金の申請には、初診日の確認や保険料納付要件など、医療機関だけでは完結しない手続きも含まれます。まずは年金事務所や街角の年金相談センターで、ご自身が要件を満たしているかご確認いただいたうえで、診断書の作成については当院の医師にご相談ください。

出典・参考

その他の制度・仕組み

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