
PMS(月経前症候群)とPMDD(月経前不快気分障害)の違いは、心の症状の重さと、仕事や家族との関係に出ている支障の大きさにあります。生理の1週間ほど前から気分が沈み、ささいなことで腹が立ち、生理が始まると楽になる。この波で生活が回らなくなっているなら、PMDDの可能性を考え、2周期以上の毎日の記録で確かめて診断します。体の症状が中心なら婦人科、落ち込みやイライラが中心なら心療内科・精神科が相談先で、両方にかかっても差し支えありません。三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区・JR三ノ宮駅から徒歩4分)の診察で医師が見ている順に、見分け方と治療の進め方を書きます。
PMSそのものの説明(症状の種類、起こる仕組み、セルフケアの中身)は月経前症候群(PMS・PMDD)にあります。
PMSとPMDDの見分け方と、PMDDの診断の基準
診察で最初に確かめるのは、つらさの中心が体にあるのか、心にあるのかです。頭痛や腹痛、むくみ、胸の張りが中心で気分は多少沈む程度なら、まずPMSとして考えます。
PMDDは、PMSのうち心の症状が重く、生活が回らなくなる状態です。PMSでも心の症状や生活への支障は出るので、PMDDかどうかは症状の重さに加えて、種類と数、生理との関係を確かめて判断します。アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5-TR)に沿って医師が見るのは、次の点です。
- 時期: 生理前の1週間ほどに症状が強まり、生理が始まって数日のうちに軽くなり、生理後の1週間にはごく軽くなるか、なくなっている
- 心の症状: 気分の浮き沈み・イライラや怒りっぽさ・落ち込みや絶望感・不安や緊張のどれかが入っている
- 症状の数: 心の症状のどれかを含めて、集中しにくさや眠気、体のだるさなど基準に挙げられた症状が合わせて五つ以上ある
- 苦痛と支障: 強い苦痛があるか、仕事や学業、家族や友人との関係にはっきりした支障が出ている
- 繰り返し: 過去1年の大半の周期で、同じ傾向があった
- ほかの原因の除外: ほかの病気の悪化や、飲んでいる薬、体の病気では説明がつかない
これらがそろうかを、症状のある2周期以上の毎日の記録で確かめたときに、医師がPMDDと診断します。記録がそろうまでは「仮の診断」として扱いますが、治療の相談は仮の段階から始められます。
生活への支障とは、たとえばこんなことです。生理前になると決まって仕事を休む、あるいは出勤しても集中が続かない。人と会うのがつらくなり、家事が手につかない。これが毎月のように繰り返され、生理が終わると「なぜあんなに」と思うほど落ち着く。この落差が、PMDDを疑う手がかりです。
生理前だけなのか、いつも続いているのか(PME・双極性障害との見分け)
PMDDと見た目が似ていて、見分けておきたいものが二つあります。
一つめは、もともとあるうつ病や不安症が生理前に悪化している状態で、月経前増悪(PME)と呼びます。手がかりは、生理が終わったあとの1週間です。PMDDならこの時期にはごく軽くなるか、なくなります。生理後にも落ち込みや眠れなさ、だるさが続く場合は、もともとの病気が生理前に悪化しているPMEなどを検討し、うつ病や不安症の治療を土台にするかを考えます。
二つめは、双極性障害(躁うつ病)です。眠らなくても平気で動き回れる・話が止まらない・お金の使い方が普段と違うといった、活動的になる時期が過去にあったかを診察で聞きます。そうした時期があれば、その期間や普段との違いをたずね、双極性障害(躁うつ病)の可能性も含めて確かめます。双極性障害があると使う薬が変わり、多くはありませんが、抗うつ薬だけで始めると気分が上がりすぎることがあるためです。PMDDとほかの病気が重なっていることもあるので、どちらか一方と決めつけず、記録と診察をもとに診断と治療を見直します。
甲状腺の病気や貧血が、だるさや落ち込みの形で現れていることもあります。心あたりがあれば、婦人科や内科での確認をお願いしています。
今すぐ自分を傷つけそうなど、身の危険が迫っているときは、ためらわず119番(救急)に連絡してください。「消えてしまいたい」「死にたい」と感じるときは、どうか一人で抱えず、当院や現在かかっている医療機関、信頼できるご家族や友人に相談してください。よりそいホットライン(0120-279-338・通話料無料)でも相談できます。そのほかの相談先は、厚生労働省の相談窓口案内「まもろうよ こころ」で紹介されています。
PMDDの診断に使う症状の記録のつけ方(2周期・毎日・生理が始まった日)
PMDDを確かめる症状の記録は、毎日つけます。思い出して書くと、記憶が生理前に偏りやすいからです。あとからまとめて書くと、生理後に軽くなっていたかが分からなくなります。
まずは1日1行の簡単な記録から始められます。気分の落ち込み・イライラ・不安・体のだるさや痛み・睡眠の調子を、「なし・軽い・中くらい・強い」の4段階などでつけます。生理が始まった日も記すと、症状との関係を確認しやすくなります。書けなかった日は空欄のままで、分かる範囲を診察で教えてください。
紙の手帳でもスマートフォンのアプリでもかまいません。
目安は2周期分ですが、そろうまで受診を待つ必要はありません。つらさが強いときは記録がないまま受診し、診察のあとから始めていただいて構いません。診断に足りない項目は、診察で補います。
婦人科と心療内科・精神科のかかり方(どちらから・両方・紹介状)
PMS・PMDDで婦人科と心療内科・精神科のどちらから受診するかは、いちばんつらい症状で決めて差し支えありません。体の症状が中心なら婦人科、心の症状が中心なら心療内科・精神科で、両方にかかることもできます。
婦人科から相談したほうがよいのは、腹痛やむくみ、胸の張りなど体の症状が中心のときと、低用量ピルなどホルモンの治療を希望するときです。妊娠の可能性がある、不正出血や強い腹痛があるときは、婦人科など体の状態を診察できる医療機関に相談してください。妊娠を希望している方や授乳中の方は、そのことを受診先に伝えてください。気分の症状は当院でも相談でき、必要に応じて婦人科と情報を共有します。
心の症状が中心なら、当院で相談してください。落ち込みやイライラ・不安・涙もろさと仕事や人間関係への支障を中心に診察し、うつ病や双極性障害が隠れていないかも見ます。
当院の診察で、体の症状が目立つなど婦人科での相談が合いそうなときは、婦人科への紹介状を作成します。
当院では、婦人科の診察や血液検査など体の検査は行っていません。
PMS・PMDDの治療の選択肢(SSRI・漢方薬・カウンセリング・生活・ホルモン治療)
治療は症状の重さと生活に合わせて組み合わせます。
SSRIは、脳内のセロトニンの働きを調整する抗うつ薬で、日本ではうつ病や不安症などを対象に承認されています。PMDDそのものを対象とした承認は日本にはありませんが、国内外でPMDDの治療の選択肢のひとつとして用いられています。当院でPMDDにSSRIを使うかどうかは診察ごとに医師が判断し、使う場合はその理由・見込まれる効果・副作用・費用の扱いを説明したうえで、ご本人と相談して決めます。
飲み方には、毎日続けて飲む方法と、排卵後から生理が始まるころまで(黄体期)に飲む方法があります。生理前だけ飲む場合に始める日と終える日は、周期や症状に合わせて医師が決めます。2024年に更新されたコクランレビュー(世界の臨床試験をまとめて評価する国際組織の報告)は、PMSとPMDDをあわせて評価したものです。それによると、SSRIは生理前の症状全体を減らす可能性が高いとされています。毎日飲む方が生理前だけ飲むより効果が大きい可能性もある一方、吐き気やだるさ、眠気などの副作用はよくみられると報告されています。効き方も副作用も個人差があり、始める量や飲む期間は経過を見ながら調整します。妊娠中や妊娠を希望している方、授乳中の方は、薬の使い方を医師と相談し、婦人科と連携して進めます。薬全般の考え方は薬物療法についてをご覧ください。
漢方薬は、体質と症状に合わせて医師が選びます。冷えやだるさとイライラが重なるなど、心と体の両方にまたがる症状があるときに検討します。漢方薬にも副作用やほかの薬との飲み合わせがあるので、確認したうえで選びます。代表的な処方は月経前症候群(PMS・PMDD)のページに書いてあります。
カウンセリングは、生理前の考え方の癖や、イライラしたときの対処を一緒に整理する時間です。つらい経験を振り返ることで、一時的に気持ちがつらくなることがあります。話す内容や進め方は相談しながら調整し、負担が大きいときや合わないと感じたときは中断できます。必要な回数や期間は、困りごとと経過に応じて相談します。心理カウンセリングは自費診療で、初回25分3,300円、2回目以降50分6,600円(いずれも税込)、実施日は月・火・木・土です。診察料は別途かかります。費用の詳細は料金案内をご覧ください。保険診療と同じ日には受けられません。
睡眠やカフェイン、アルコール、運動など生活面の工夫は、月経前症候群(PMS・PMDD)のページにまとめてあります。生理前の不眠が強く、それ自体がつらいときは睡眠障害(不眠症)の対応もあわせて考えます。
低用量ピルなどホルモンの治療は、当院では処方していません。希望する方には婦人科をご案内し、使えるかどうかは婦人科の診察で判断されます。
PMDDの治療の進み方と、よくならないとき
初診では、症状が出る時期と生理との関係・生活への支障・これまでの気分の波・飲んでいる薬を聞き、仮の診断を立てます。記録がなければ始め方を説明し、つらさが強い場合は記録と並行して治療を始めます。
薬は少ない量から始めます。効果は次の生理前後の記録も見ながら確かめるため、はっきり分かるまで1〜2周期かかることがあります。開始後の体調や副作用は、それを待たずに確認します。強い不安や落ち着かなさ、眠れなさなどが出たときは、次の予約日を待たずに相談してください。
よくならないときは、診断・服用の状況・効果・副作用を確認し、薬の量や飲み方の変更・別の薬・カウンセリングの併用などを検討します。生理後にも不調が続く場合はPMEなどを検討し、活動的になる時期があれば双極性障害の可能性も確かめて、診断そのものを見直します。
治療では、つらさを減らし、仕事や学校、家庭で過ごしやすくなることを目指します。どこまで変わるかは人によって違い、はじめから約束はできません。どの症状をどこまで改善したいか、生活で何を取り戻したいかを相談しながら、記録を手がかりに調整していきます。
生理前の症状で仕事を休みたいとき(診断書・生理休暇・家族への伝え方)
PMS・PMDDの症状で仕事を休むための診断書は、三宮駅前こころのクリニックでは医師が診察で状態を確認し、必要と判断した場合に作成します。生理前の数日だけ仕事に行けない、行っても働けない、といった状態が対象になります。記載内容は診察で確認した状態に基づきます。文書料は当院書式4,900円、会社などの指定書式6,600円(いずれも税込)です。医師が必要と判断した場合、即日発行も可能です(診察内容や書式によっては後日のお渡しになります)。診断書の種類や注意点は診断書について、そのほかの料金は料金案内をご覧ください。診断書があっても、休みや勤務の変更が認められるかどうかは会社の就業規則で決まります。
労働基準法には、生理日の就業が著しく困難な女性が請求したときは、生理日に就業させてはならない定め(いわゆる生理休暇)があります。就業規則に書かれていなくても請求でき、有給か無給かは会社の定めによります。ただしこれは生理が始まってからの日についての定めで、生理前の数日を休めるかどうかは、会社が独自に設けている休暇の制度や、欠勤・勤務調整の扱いによります。生理前の日が対象になるか、有給か無給かは、人事に確かめてください。
話せる相手であれば、つらくなりやすい時期と、休ませてほしい・家事を代わってほしいなど具体的に助けてほしいことを伝える方法もあります。
よくあるご質問
PMDDの診断は、1回の診察でつきますか。
初診で診断できるかどうかは、それまでの記録や経過によります。症状が生理前に集まり、生理後にはごく軽くなるかなくなっていることを、2周期以上の毎日の記録で確かめるのが基本です。記録が十分でなければ仮の診断として、受診後の記録で確かめます。仮の診断の段階でも、つらさが強ければ治療の相談は始められます。「診断がつくまで何もできない」わけではないので、記録がない状態でも受診してください。
婦人科に通っていますが、心療内科にも行っていいですか。
差し支えありません。婦人科でピルや漢方薬を続けながら、落ち込みやイライラの面を当院で相談していただけます。受診の際は、婦人科で処方されている薬が分かるもの(お薬手帳など)をお持ちください。薬の組み合わせを確認したうえで進めます。当院から婦人科へ情報を伝えたほうがよい場合は、ご本人の了解を得て紹介状などで共有します。逆に、当院の診察で体の面の相談が合いそうだと判断したときは、婦人科をご案内します。
SSRIを飲み始めたら、ずっと飲み続けることになりますか。
決まった期間はありません。毎日続けて飲む方法と、生理前の期間だけ飲む方法があり、効き方と副作用を見ながら診察で調整します。症状が落ち着いたあとも、続ける期間や減らし方は一人ひとり相談して決めます。自己判断で急に中断せず、診察で相談してください。妊娠を希望している方、妊娠中や授乳中の方は、その旨を伝えてください。婦人科と連携して薬の扱いを考えます。
PMS・PMDDで生理前だけ仕事を休みたいとき、診断書は出ますか。
三宮駅前こころのクリニックでは、医師が診察で状態を確認し、必要と判断すれば診断書を作成します。記載内容は診察で確認した状態に基づきます。文書料は当院書式4,900円、会社などの指定書式6,600円(いずれも税込)です。発行の時期や書式は診察でご案内します。ただし、休みや勤務の変更が認められるかは会社の就業規則で決まります。法律で定められた生理休暇は生理が始まってからの日が対象なので、生理前の日を休める制度があるか、有給か無給かもあわせて人事に確かめてください。
記録がないまま初診を受けるとき、何を持っていけばいいですか。
記録がなくても受診できます。思い出せる範囲で、直近の生理が始まった日と、つらかった時期をメモしてお持ちいただくと、初回の話が進めやすくなります。婦人科で薬を処方されている方は、お薬手帳など処方内容が分かるものもお持ちください。初診では、症状が出る時期と生理の関係・生活への支障・これまでの気分の波を聞き取り、記録の始め方も説明します。記録は診断の手がかりであって受診の条件ではないので、つらさが強いときは記録を待たずに受診してください。
受診のご案内(生理前の心の症状)
三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区・JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科)では、生理前の落ち込みやイライラ、不安など気分症状の面を中心に診療しています。PMDDかどうか、うつ病や双極性障害が隠れていないかを診察で確かめ、医師が診断と症状に応じて薬や漢方薬の使用を検討します。婦人科の診察や血液検査などの体の検査は行っていないため、体の症状が強い方や低用量ピルを希望する方は婦人科をご案内し、必要に応じて紹介状を作成します。PMSの全体像は月経前症候群(PMS・PMDD)をご覧ください。
心理カウンセリングは自費診療で、初回25分3,300円、2回目以降50分6,600円(いずれも税込・診察料は別途)、実施日は月・火・木・土です。保険診療と同じ日には受けられません。土日祝も診療しており、WEB予約は24時間受け付けています。はじめての方は初診の方へをご覧ください。
次に読む月経前症候群(PMS・PMDD) あわせて読む心理カウンセリング あわせて読む薬物療法について はじめての方へ初診の方へ|ご予約方法・受診までの流れ(WEB予約24時間受付)参照・出典元
- 日本産科婦人科学会 女性ヘルスケア委員会「月経前症候群・月経前不快気分障害に対する診断・治療指針」(2025年3月・PDF)
- 女性の健康推進室ヘルスケアラボ(厚生労働省研究班監修)「月経前症候群(PMS)」
- 米国保健福祉省 Office on Women's Health「Premenstrual dysphoric disorder (PMDD)」
- 同「Premenstrual syndrome (PMS)」
- Cochrane「What are the benefits and risks of treating premenstrual syndrome and premenstrual dysphoric disorder with selective serotonin reuptake inhibitors?」(2024年更新・CD001396)
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」
- 厚生労働省 女性にやさしい職場づくりナビ「生理休暇(労働基準法第68条)」
本記事は一般的な情報提供であり、診断や治療の効果を保証するものではありません。PMS・PMDDの診断と治療の内容は、診察で症状と経過を確認したうえで医師が判断します。薬の使用の可否や注意点、妊娠中・妊娠希望・授乳中の方の薬の扱いは、診察でご相談ください。診断書を出したあとの休みや勤務変更の扱いは勤務先の定めによります。
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