レースカーテン越しの朝の光の中、窓辺の素焼きの鉢に若葉の双葉が一株生えている水彩イラスト

目覚ましは聞こえている。起きなければいけないことも分かっている。それなのに、体が動かない。やっと家を出ても、電車の中で理由もなく涙が出てくる。会社が近づくにつれて、吐き気がしてくる。

こうした状態が2週間ほど続いているなら、受診を考えてよい段階です。気合いや根性の問題ではありません。心が限界に近づくと、症状は気分よりも先に体へ出ることが多いのです。朝起き上がれない、涙が止まらない、出勤前の吐き気。いずれも、精神科・心療内科の診察室でよくお聞きするサインです。

受診を考える目安、診察で実際に行うこと、そして仕事をいったん休む選択肢について、順にご説明します。

体と心に出るサイン

心の不調は、「気分が落ち込む」というかたちだけで現れるとは限りません。最初のサインは、体と行動に出ることが多いです。

体のサイン

  • 朝、目は覚めているのに、起き上がるまでに長い時間がかかる
  • 出勤前になると吐き気・腹痛・頭痛・動悸がする
  • 日曜の夜に眠れない。月曜の朝がいちばんつらい
  • 食欲が落ちた。食べても味がしない

心と行動のサイン

  • 仕事のことを考えると涙が出る。通勤電車で泣いてしまう
  • 遅刻や当日欠勤が増えた
  • 家を出たものの、駅やオフィスの手前で足が止まる
  • 簡単なメールが書けない。ミスが目に見えて増えた

睡眠の変わり方にも特徴が出ます。寝つけないだけでなく、夜中に何度も目が覚める。予定より2時間も早く目が覚めて、そのまま眠れない。眠りは心の状態を映しやすく、診察でも必ずお聞きする項目のひとつです。

自分では気づきにくいサインもあります。家族や同僚から「顔つきが変わった」「最近ぼんやりしている」と言われる。以前なら数分で片づいた判断に、何十分もかかる。心の疲れは集中力や判断力を静かに削っていくため、本人の自覚より先に、仕事の質や表情に現れることがあるのです。

ひとつ、注目していただきたい特徴があります。朝がいちばんつらく、夕方になると少し楽になる。「日内変動」と呼ばれるこのパターンは、うつ状態でよくみられるものです。夕方に動けることは「大丈夫」の根拠にはなりません。むしろ受診を考える材料になります。

「休みの日は動けるのだから、自分は怠けているだけだ」。そう自分を責める方が、診察室にはたくさんいらっしゃいます。実際には、仕事という特定のストレスから離れると症状が軽くなる経過は適応障害でよくみられるもので、怠けの証拠ではありません。この経過については適応障害の症状と治療で詳しく解説しています。

一方、休日になっても気分が晴れない、好きだったことを楽しめない状態が続くときは、うつ病の症状・原因・治療も参考にしてください。ただし、どちらに当てはまるかをご自身で判定する必要はありません。それは診察で確かめることです。

「甘え」と言い切れない理由

出勤前の吐き気や涙は、意思の力で止められる反応ではありません。強いストレスが続くと自律神経のバランスが崩れ、内臓や涙腺のような「自分の意思では動かせない部分」に症状が出ます。歯を食いしばって我慢できる種類のものではない、ということです。

休んでも疲れが抜けないのも、同じ仕組みで説明がつきます。ストレスの原因が解決しない間、心と体は緊張したままです。眠りが浅くなり、疲れが翌日に持ち越され、その状態でまた出勤する。この循環に入ると、休日の1日や2日では回復が追いつかなくなります。受診は、この循環を外側から断ち切るための手段でもあります。

我慢を続けた場合の経過も、率直にお伝えしておきます。症状が出ている状態で無理な出勤を重ねると、不調が深まり、回復に必要な期間も長くなりやすいことが知られています。「もっと重い人が行く場所だから、自分はまだいい」と受診を先延ばしにする方は多いのですが、軽いうちに相談することには何の問題もありません。休養のとり方や環境の調整だけで立て直せる可能性が残っている、選択肢の多い段階です。

受診を考える目安

インターネットのセルフチェックで何点だったか、ではなく、次の目安で考えてみてください。

  • つらさが2週間以上続いている
  • 遅刻・欠勤・ミスの増加など、仕事に実際の支障が出ている
  • 吐き気・涙・動悸など、体の症状が繰り返し出る
  • 眠れない日、食べられない日が続いている
  • 「自分が消えたほうが楽だ」と思うことがある

ひとつでも当てはまるなら、受診を検討してよい状態です。すべて揃う必要はありません。逆に、どれにも当てはまりきらなくても、ご自身が「つらい」と感じているなら、それだけで受診の理由になります。この目安は、ご家族やパートナー、同僚の様子が心配なとき、受診を勧める際の参考にもしていただけます。

なお、死にたい気持ちが続いているとき、今夜をどう乗り切るかに迫られるほど切迫しているときは、当院の予約を待たないでください。#いのちSOS(0120-061-338・24時間・通話料無料)などの公的な相談窓口や、救急(119)につながることを優先してください。

初診で行うこと(うまく話せなくても大丈夫)

精神科の初診と聞くと、身構える方が多いと思います。「こんなことで来たのかと言われないだろうか」という心配もよく伺います。そう言われることはありません。受診してよい状態かどうかを確かめること自体が、診察の役割だからです。実際に行うことは、シンプルです。

まず問診票に、今の状態やこれまでの経過を記入していただきます。続く診察では、医師が質問をしながら症状と生活の様子を伺います。いつごろからつらいのか。眠れているか。食事はとれているか。仕事の状況はどうか。質問に答えていくかたちで進むので、あらかじめ話をまとめてくる必要はありません。

うまく話せる自信がない方は、メモをお持ちください。箇条書きで十分です。診察室で泣いてしまっても、言葉に詰まっても、問題ありません。それも含めて、今の状態を知る手がかりになります。最初の一言は「朝、会社に行けなくなりました」だけで足ります。そこから先は、医師のほうから伺います。

初診で必ず診断名が付くとも限りません。まず休養と環境の調整から始めて、必要に応じてお薬を検討する。経過を見ながら一緒に方針を決めていくことも多くあります。

仕事をいったん休む選択肢

治療の手段のひとつに、仕事から離れて療養することがあります。ストレスの原因が仕事にある場合、原因のただ中にとどまったままでは休養の効果が出にくいからです。

多くの会社では、就業規則に休職の制度が定められています。医師の診断書を会社に提出し、療養に専念する期間をとる方法です。診断書は、診察のうえで医師が必要と判断した場合に発行します。記載される内容や費用は診断書について(記載内容・費用)でご確認いただけます。

休むことをためらう気持ちも、診察室でよく伺います。同僚に迷惑がかかる。評価が下がるのが怖い。一度休んだら戻れなくなる気がする。どれも自然な心配です。ただ、限界を超えて働き続けた末に長い療養が必要になるより、早めに休んで回復するほうが、結果として職場を離れる期間が短くて済む場合も多くあります。収入の面では、支給要件を満たせば、お勤めの方が加入する健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)から傷病手当金が支給され、休職中の生活を支えます。

休職の進め方、休職中の過ごし方、傷病手当金の申請、復職までの流れは休職・復職の進め方にまとめています。休職を考え始めた段階で一度目を通しておくと、先の見通しが立てやすくなります。

なお、休職はゴールではなく、回復までの通過点です。休み始めの時期には、一日中眠くなったり、休んでいることへの罪悪感が出たりしますが、こうした反応は療養の経過のなかで薄らいでいくことが多いものです。

ひとつだけ先にお伝えします。つらさが強い時期に、退職のような大きな決断を急ぐ必要はありません。休んで、回復してから考えても遅くありません。

よくあるご質問

病院に行くほどではない気がします。それでも受診していいですか。

受診していただいてかまいません。「行くほどかどうか」の線引きを、つらさの渦中にいるご本人が正確に判断するのは難しいものです。診察の結果「今は経過を見ましょう」となることもありますが、それが分かるだけでも受診の意味はあります。

精神科と心療内科、どちらを受診すればいいですか。

迷う必要はありません。三宮駅前こころのクリニックは精神科・心療内科のクリニックで、どちらの科名で探された方もご相談いただけます。「朝起きられない」「涙が出る」という状態は、科名を選ぶより先に、まず相談していただきたいものです。

受診したことが会社に知られませんか。

医療機関には守秘義務があり、当院から勤務先へ連絡することはありません。健康保険を使って受診しても、診断名や診察の内容が会社へ通知される仕組みはありません(ご加入の健康保険組合から届く医療費のお知らせに、受診した医療機関名が載る場合はあります)。

診断書を提出するかどうか、職場に何を伝えるかは、ご本人が決めることです。

涙が止まらなくて、診察で話せる気がしません。

話せなくても診察は進められます。問診票とメモがあれば、医師からの質問に「はい」「いいえ」で答えられる範囲でかまいません。無理に説明しようとしなくて大丈夫です。

神戸・三宮で相談するなら

三宮駅前こころのクリニックは、JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科です。「朝、仕事に行けない」「涙が出る」という段階でのご相談もお受けしています。診断名が付く前の相談で、まったく問題ありません。

土日祝も診療しているため、平日に休みを取りにくい方も受診しやすい体制です。診療時間は全曜日9:30〜13:30/15:00〜19:00。ご予約はWEB予約(24時間受付)またはお電話(078-891-8558)で承ります。話す準備が整うのを待つ必要はありません。まずはご予約だけでも構いません。

次に読む休職・復職の進め方|診断書から復職までの流れ はじめての方へ初診の流れとご予約方法(WEB予約24時間受付)

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個々の診断や治療方針を示すものではありません。症状やご事情は一人ひとり異なります。判断に迷うときは、診察のなかでご相談ください。

この記事の執筆・監修
近藤 大貴(三宮駅前こころのクリニック 副院長)

近藤 大貴執筆|三宮駅前こころのクリニック 副院長/精神保健指定医

藤田医科大学卒業。名古屋市立大学病院こころの医療センター、豊川市民病院、稲美しんわ病院(副院長)にて精神科診療に従事。適応障害・うつ病など、働く方のメンタルヘルス診療に力を入れている。

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宇治田 直也(三宮駅前こころのクリニック 院長)

宇治田 直也監修|三宮駅前こころのクリニック 院長/精神保健指定医・公認心理師・日本医師会認定産業医

札幌医科大学卒業。神戸大学病院での勤務を経て精神科へ転向し、明石こころのホスピタル、戸田病院(医局長・診療部長)にて診療に従事。

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公開日 2026年8月17日/最終更新 2026年8月17日

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