机の上に並んだ2冊のノートと鉛筆、双葉の水彩イラスト

「休みの日は少し楽になるから、適応障害のほうだろうか」「もう2週間以上続いているから、うつ病かもしれない」。受診の前に、ご自身の状態に名前を付けようとして、調べれば調べるほど分からなくなってしまう。そんな経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

無理もありません。適応障害とうつ病は、不眠や食欲の変化、意欲の低下といった、表に出てくる症状がよく似ているのです。この記事では、二つの違いがどこにあるのか、そして診察で医師が何を確かめているのかをお話しします。先にお伝えしておくと、どちらなのかをご自身で決めてから来ていただく必要はありません。

この記事の要点

  • 適応障害とうつ病の大きな違いは、ストレスの原因との結びつき方にあります。
  • 適応障害では、はっきりしたストレスの原因があって、その発生から間を置かずに症状が現れます。原因から離れると症状がやわらぐことがありますが、経過には個人差があり、必ず回復するとは限りません。
  • うつ病では、きっかけがあってもなくても、気分の落ち込みや興味・喜びの減退が、ストレスの原因から離れているときにも続きやすくなります。
  • 不眠・食欲の変化・意欲や集中力の低下は適応障害とうつ病のどちらにも現れるため、症状だけでご自身で判断するのは困難です。
  • 適応障害は「軽いうつ病」でも「うつ病の前段階」でもありません。同じ症状のまとまりがうつ病など別の病気の診断基準を満たすときは、その診断を検討します。
  • 適応障害とうつ病のどちらにあたるかは、診察で医師が経過をうかがいながら判断します。どちらか分からないまま受診していただいて大丈夫です。

三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区旭通・JR三ノ宮駅徒歩4分)は、神戸・三宮で適応障害やうつ病のご相談をいただける精神科・心療内科です。診察を担当するのは院長・宇治田直也と副院長・近藤大貴(いずれも精神保健指定医)で、土日祝も診療しています。

適応障害の全体像(症状、原因、治療の進め方)は適応障害のページに、うつ病の症状や治療の全体像はうつ病のページにまとめてあります。この記事では、その二つの「違い」に絞ってお話しします。

適応障害とうつ病は、どこが違うのか

適応障害とうつ病の大きな違いは、ストレスの原因との結びつき方にあります。症状の広がり方や続き方にも、その違いは表れてきます。なお、ここに書くのはあくまで診断の考え方で、ご自身が当てはまるかどうかを判定するための項目ではありません。

適応障害は、原因との結びつきがはっきりしている

適応障害は、異動や人間関係の変化など、はっきりしたストレスの原因があって、その発生から間を置かずに症状が現れてくる状態です。目安となる期間は手引きによって異なり、米国精神医学会の手引きでは3か月以内、世界保健機関の分類ではおおむね1か月以内とされています。

気分の落ち込みや不安は、原因となっている状況と結びついて動きます。原因から離れているあいだは症状がやわらぐこともあるのですが、経過には個人差があって、離れさえすれば必ず回復する、というものでもありません。

うつ病は、原因から離れても続きやすい

うつ病は、きっかけがはっきりしている場合もあれば、思い当たる原因がないまま始まる場合もあります。いったん始まると、気分の落ち込みや興味・喜びの減退が、ストレスの原因から離れているときにも続きやすくなります。好きだったことに心が動かず、休みの日も気分が晴れない。症状が生活の広い範囲に及び、簡単には動かなくなっていきます。

国際的に使われている診断の手引きでは、気分の落ち込みや興味・喜びの低下を含む複数の症状が、少なくとも2週間、ほぼ毎日続いていることなどが確認されます。ただ、2週間という長さだけでうつ病と診断されるわけではなく、症状の数や重さ、生活への影響もあわせて確かめます。

「適応障害は軽いうつ病」ではありません

二つは、症状の軽い・重いの順に並んでいる関係にはありません。診断のうえでは、今回の症状のまとまりが、うつ病など別の病気の診断基準を満たす場合、あるいはその病気でよりよく説明される場合には、そちらの診断を検討します。

「適応障害はうつ病の軽いもの」「放っておけばうつ病になる前段階」といった説明を見かけることがありますが、こうした位置づけは正確さを欠きます。適応障害にも、仕事を続けられないほど強い苦痛を伴う場合があります。

症状だけでは見分けがつきにくい理由

不眠、食欲の変化、意欲や集中力の低下は、適応障害とうつ病のどちらでも現れることがあります。症状の一覧をいくら見比べても、それだけでどちらかを判別することはできないのです。

「休日に元気なら適応障害」とは限らない

インターネットでは、「休日に元気になれるなら適応障害、休日も落ち込むならうつ病」といった見分け方がよく紹介されています。たしかに、原因から離れたときの変化は、診察で参考にする情報のひとつです。ただ、それだけで診断が決まるわけではありません。

実際には、適応障害でも休日に症状が残る場合がありますし、うつ病でも日や時間帯によって調子に波が出ることがあります。休日の調子は、診断の決め手というより、あくまで手がかりのひとつです。

経過のなかで見え方が変わる

症状の出方は、時間とともに変わっていきます。初診の時点ではどちらとも言い切れず、いったんの見立てを立てたうえで、経過をみながら診断を確かめていくこともあります。医師でも一度の診察で決めきれないことがあるのですから、ご自身の一度の判断で名前を確定させようとしなくて大丈夫です。

診察で医師が確かめていること

初診では、今の症状だけでなく、始まりから現在までの流れを時間に沿ってうかがいます。手がかりにするのは主に、症状とストレスの原因との時間的な結びつき、症状の質と持続、生活への支障、他の病気の可能性、これまでの経過という5つの点です。この5点を確かめながら、適応障害とうつ病を見分けていきます。安全に過ごせているかなど、状況に応じてうかがうことはほかにもあります。

症状とストレスの原因との、時間的な結びつき

何がいつ起きて、いつから調子が変わったのか。この順序が、大きな手がかりになります。原因から離れたときに調子が変わるかどうかも、あわせてうかがいます。

症状の質と重さ、続いている長さ

ここでは、落ち込みがどれくらい深いか、興味や喜びがどの程度失われているか、気力がどう落ちているかをうかがいます。症状が数日単位の波として動いているのか、ほとんど毎日続いているのかも、大切な確認点です。こうした症状の質と持続を確かめながら、適応障害の範囲にあるのか、うつ病の診断基準を満たす状態なのかを見ていきます。

生活にどれくらい支障が出ているか

仕事や家事、睡眠や食事、人づきあいのなかで、これまでできていたことがどの程度できなくなっているかをうかがいます。ここで確認しているのは、実際に起きている事実です。

他の病気の可能性はないか

気分が極端に高まる時期がなかったか(双極性障害の確認)や、不安の症状が中心ではないかを確かめます。甲状腺の病気など似た症状を示す身体の病気、飲酒や服用中の薬の影響といった可能性も、一つずつ見ていきます。必要に応じて、身体の病気を除外するための検査ができる内科など他の医療機関をご案内することがあります。

これまでの経過

過去に同じような時期があったかどうかもうかがいます。あったとすれば、どんな状況で、どのように回復したのか。そのときの経過が、今回の状態を理解するための大切な材料になります。

適応障害の診断がどのような考え方で行われるかは、適応障害の診断についての記事でくわしく説明しています。

見分けがつくと、治療の進め方が変わる

なぜ二つを見分けるのかといえば、診断によって治療の組み立てが変わるからです。名前を付けること自体が目的ではありません。

適応障害の治療は、環境調整と精神療法が中心

適応障害では、原因となっているストレスへの対処が治療の柱になります。業務量を調整する、配置を見直す、必要に応じて休職する、といった形で環境の側に働きかけながら、精神療法でご本人の受け止め方や対処を支えていきます。薬を使うこともありますが、あくまで補助的な役割です。

うつ病の治療は、休養が土台

うつ病では、まず心と体を休ませることが治療の土台になります。休養できる環境を整えたうえで、症状の重さや生活の状況に応じて、薬物療法や精神療法を組み合わせていきます。抗うつ薬は、一般に依存を生じる薬とは位置づけられていません。ただ、自己判断で急に中断すると、離脱症状や症状の再燃が起こることがあります。だからこそ、減らし方や中止の時期は医師と相談しながら決めていきます。治療の期間は個人差があり、数か月から1年以上かかることもあります。うつ病の症状と治療の全体像はうつ病のページでくわしく説明しています。

なお、どちらの場合も、働き方の調整や休職が必要になることがあります。休職できるかどうかや手続きの進め方は、勤務先の就業規則によって異なります。

適応障害からうつ病に移行することもある

適応障害は、ストレスの原因が短期間で解消されれば、自然に回復することもあります。一方で、原因が続くと、症状が慢性化したり、うつ病に移行したりすることもあります。もちろん必ず移行するわけではないのですが、そうした経過をとる場合があることは、頭の片隅に置いておいていただきたい点です。

診断名は、一度ついたらそのまま動かない、というものでもありません。適応障害と診断されたあと、経過のなかで症状が変わり、うつ病の診断基準を満たす状態が確認されることがあります。初診のあとに分かってきた情報によって、診断が見直される場合もあります。いずれも、適応障害が必ずうつ病へ進むという意味ではありません。診断が変わったときは、休養や薬物療法、精神療法などから、その時点の状態に合う形へ治療を組み立て直します。

経過を診察で確認していくことは、症状や診断の変化を捉える手がかりになります。受診の間隔は状態に応じて医師とご相談ください。つらさが続くときや強まってきたときは、あらためてお話しいただければと思います。

自分で見分けようとしなくて大丈夫です

どちらなのか分からないままお越しいただいて、なんの差し支えもありません。見分けることは診察の役割であって、受診の条件ではないからです。「調べてからでないと診察に迷惑がかかる」と、身構えないでください。

初診の際にお話しいただけると手がかりになりやすいのは、次のような点です。きちんとまとめる必要はなく、思い出せる範囲の走り書きで十分です。

  • いつ頃から調子が変わったか(「連休明けくらい」程度で構いません)
  • きっかけとして思い当たること(思い当たらない場合は、そのままお伝えください)
  • 休日や、ストレスの原因から離れているときの調子
  • 睡眠と食欲の変化
  • これまでに受診したことがあれば、その経過と処方されていた薬

休職のために診断書が必要な場合は、診察でお申し出ください。当院では即日発行も可能です(医師が必要と判断した場合。診察内容や書式によっては後日のお渡しになります)。書かれる内容や費用は適応障害の診断書の記事で説明しています。休職中の収入については適応障害と傷病手当金の記事にまとめてあります。

よくあるご質問

適応障害とうつ病はどう違うのですか?

適応障害とうつ病の大きな違いは、ストレスの原因との結びつき方です。適応障害では、はっきりした原因があって、その発生から間を置かずに症状が現れます。原因から離れると症状がやわらぐことがある一方、経過には個人差があり、離れれば必ず回復するとは限りません。これに対してうつ病では、きっかけがあってもなくても、気分の落ち込みや興味・喜びの減退が原因から離れているときにも続きやすくなります。症状そのものはよく似ていますから、どちらにあたるかの判断は診察で医師が行います。

自分がどちらなのか、受診前に調べてから行ったほうがいいですか?

いいえ、調べてからお越しいただく必要はありません。見分けることは診察の役割です。どちらか分からないまま、あるいはどちらでもない気がするままで、そのまま受診してください。強いて挙げれば、いつ頃から調子が変わったか、思い当たるきっかけがあるかを軽くメモしておいていただけると、診察が進めやすくなります。

適応障害と診断されていましたが、後からうつ病と言われることはありますか?

あります。症状は経過のなかで変わるものですから、診断名が見直されることはありますし、初診のあとに分かってきた情報によって見直される場合もあります。適応障害の原因となっている状況が続くと、症状が慢性化したり、うつ病に移行したりすることもあります。ただ、必ず移行すると決まっているわけではありません。診断が変わったときは、治療の組み立ても状態に合わせて整え直します。つらさが続くときや強まってきたときは、あらためてご相談ください。

適応障害とうつ病では、治療の進め方はどう変わりますか?

適応障害の治療は、環境調整と精神療法が中心で、薬はあくまで補助的な役割です。一方うつ病では、休養を土台にして、症状の重さや生活の状況に応じて薬物療法や精神療法を組み合わせていきます。抗うつ薬は一般に依存を生じる薬とは位置づけられていませんが、自己判断で急に中断すると離脱症状や症状の再燃が起こることがあるため、減らし方は医師と相談しながら決めます。どちらの場合も、休職など働き方の調整が必要になることがあります。

神戸・三宮で、適応障害かうつ病か分からない状態でも相談できますか?

はい、ご相談いただけます。三宮駅前こころのクリニック(〒651-0095 兵庫県神戸市中央区旭通4丁目1-4 シティタワープラザ 3階)は、JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科です。診療時間は9:30〜13:30/15:00〜19:00で、土日祝も診療しています。WEB予約は24時間受け付けており、お電話は078-891-8558です。なお、提携駐車場はございませんので、お車の場合は近隣の有料駐車場をご利用ください。

神戸・三宮で適応障害・うつ病の相談を

三宮駅前こころのクリニックは、JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科です。診療時間は9:30〜13:30/15:00〜19:00で、土日祝も診療しています。平日に休みを取りづらい方もご相談いただけますし、WEB予約は24時間受け付けています。

「適応障害なのか、うつ病なのか」。その問いを、一人で抱え続けなくて大丈夫です。診察で一度お話しいただくと、整理が進みやすくなります。どちらであっても、次に何をするかを一緒に考えていけます。

診断名がまだ分からない段階のご相談も歓迎しています。「これくらいで受診していいのだろうか」と迷っているときも、そのままお越しください。

この記事の執筆・監修
近藤 大貴(三宮駅前こころのクリニック 副院長)

近藤 大貴執筆|三宮駅前こころのクリニック 副院長/精神保健指定医

藤田医科大学卒業。名古屋市立大学病院こころの医療センター、豊川市民病院、稲美しんわ病院(副院長)にて精神科診療に従事。適応障害・うつ病など、働く方のメンタルヘルス診療に力を入れている。

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宇治田 直也(三宮駅前こころのクリニック 院長)

宇治田 直也監修|三宮駅前こころのクリニック 院長/精神保健指定医

札幌医科大学卒業。明石こころのホスピタルで精神科診療に従事し、戸田病院では医局長・診療部長を歴任。公認心理師・日本医師会認定産業医。

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適応障害かうつ病かは、
一人で見分けなくて大丈夫です

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「どちらか分からない」。その段階のご相談で構いません。今の状態がどちらに近いのか、診察で一緒に整理していきます。土日祝も診療しています。

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