机に置かれた2枚の無地のメモ用紙と1本の鉛筆、そばに芽を出した双葉の水彩イラスト

休職か退職かは、受診より前に決めなくてよいことです。「辞めたい」と「休みたい」が同時に浮かび、どちらかに決めないと先へ進めない気がしているなら、先に確かめたいのは心と体の調子のほうです。休職している途中で退職を決めることはできますが、退職したあとでその会社の休職制度を使うことはできないので、戻れない側の選択をあとに回す順番が成り立ちます。「退職したら治った」という話は誰にでも当てはまるものではなく、辞める前にどちらになるかは分かりません。三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区・JR三ノ宮駅から徒歩4分)の診察で、迷っている段階の方と一緒に確かめている順に書きます。

休職の手続きの流れ、休職中の過ごし方、復職までの全体像は休職・復職の進め方にまとめてあります。

「仕事を辞めたい」と「休みたい」が同時に浮かぶとき

朝、支度の途中で手が止まる。仕事のことを考えると涙が出る。眠れない日が続き、食欲が落ちて、週末も体が重い。こうした状態で頭に浮かぶのが、「もう辞めたい」と「少し休みたい」の二つです。どちらも出どころは同じで、今の負荷から離れたいという気持ちです。違うのは離れ方で、籍を残したまま離れるのが休職、籍ごと離れるのが退職です。

「離れたい」ことは決まっていて、「どう離れるか」が決まっていない、という状態です。離れ方は、心と体の調子が分かってから決めても遅くありません。調子を崩している時期に出した結論は、戻ってから振り返ると違って見える場合があります。急いで決めなくてよい理由は、休職と退職の順番の違いにあります。

三宮駅前こころのクリニックでは、出勤できているかどうかを受診の条件にしていません。診断名が付く前の段階でも診察はできます。先に挙げたような状態が続いているなら、適応障害やうつ病などの可能性を考えて診察します。どれに当たるかは診察で確かめることで、ここで決めつけるものではありません。

今すぐ離れたほうがよい状況の見分け

休職か退職かを今日決めなくてよい、には例外があります。代表的なのは、身の安全にかかわる状況と、体の危険がある状況の二つです。この二つに当てはまるときは、休職か退職かより先に、その場から離れること・体を診てもらうことを優先してください。

一つは、身の安全にかかわる状況です。暴力や脅迫を受けている場合は、療養とは切り離して、その場から離れることを優先してください。ハラスメントや長時間労働など労働条件の問題については、直属の上司以外の社内窓口のほか、各都道府県の労働局や労働基準監督署にある総合労働相談コーナーで、予約なしで無料で相談できます。退職届や合意書に署名する前に、そうした窓口を使う方法もあります。

もう一つは、体の危険です。食事がとれない日が続く、眠れなくて立っていられない、仕事中に意識が遠のく。こうしたときは、休職か退職かより先に、医療機関で体の状態を診てもらってください。

今すぐ自分を傷つけそうなど、身の危険が迫っているときは、ためらわず119番(救急)に連絡してください。「消えてしまいたい」「死にたい」と感じるときは、どうか一人で抱えず、当院や現在かかっている医療機関、信頼できるご家族や友人に相談してください。よりそいホットライン(0120-279-338・通話料無料)でも相談できます。そのほかの相談先は、厚生労働省の相談窓口案内「まもろうよ こころ」で紹介されています。

こうした状況に当てはまらなければ、急いで決める必要は薄れます。ただ、ここに挙げた例がすべてではありません。職場にとどまることがつらいときは、相談窓口や医療機関に相談できます。

休職と退職はどちらが先か|あとから変えられること・変えられないこと

休職と退職の違いは、あとから変えられるかどうかにあります。休職している途中で退職を決めることはできます。退職したあとで、その会社の休職制度を使うことはできません。片方からもう片方へは移れますが、逆には戻れません。この向きの違いがあるので、「今は決めない」が選択肢として成り立ちます。ただし、休職を先に選ぶことが誰にでも合うわけではありません。体調や職場の状況、生活費を踏まえて考えます。

退職の意思を会社に伝えると、原則として自分の判断だけでは撤回できなくなることがあります。会社と合意して辞める申込みか、一方的に辞める意思表示かで扱いが異なります。すでに伝えてしまって迷っている場合は、総合労働相談コーナーなどに相談できます。退職日が決まれば、健康保険や雇用保険の資格もその日を境に動きます。休職は、籍と保険の資格を残したまま療養に入る形です。

「退職したら治った」は本当か

「退職したら治った」は、誰にでも当てはまる話ではありません。原因から離れて軽くなる人はいますし、離れても不調が続く人、辞めたあとの収入や転職活動が新しい負荷になる人もいます。どちらになるかは、辞める前には分かりません。分からないからこそ、戻れない側の選択を先にしない順番に意味があります。

ただし、休職を選べば安心、とは言えません。私傷病による休職は、法律ですべての会社に義務づけられた制度ではありません。厚生労働省のモデル就業規則にも、休職の定義や期間、復職について労働基準法に定めはない、と注記があります。制度の有無・使える期間・休職中の賃金・期間が満了したときの扱いは、勤務先の就業規則や労働契約でご確認ください。休職中に給与が出なくても、健康保険・厚生年金の保険料は原則としてかかり、本人負担分の払い方は勤務先に確認します。無給になる定めや、期間が満了した時点で退職の扱いになる定めもあります。休職制度がない会社のほか、試用期間中や雇用期間が決まっている方を就業規則で休職の対象外としている会社もあります。その場合は、有給休暇や欠勤で療養しながら考える・業務の調整を相談する・退職を含めて考える、といった形になります。

休職を選んだあとに会社側で何が起こり、復職までどう進むかは、診断書を会社に出したあとの流れ|休職開始から復職までに起こることに時系列でまとめてあります。

退職日の前後で変わるお金のこと

退職日を境に変わるのは、傷病手当金を退職後も受けられるかどうか、雇用保険の基本手当の受け方、健康保険の加入先です。これを知らずに日付を決めると、あとから変えられないことがあります。

傷病手当金は、勤め先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)にご本人が被保険者として加入している方が、業務外の病気やけがで仕事に就けず、給与を受けられないときの給付です。ご家族の扶養に入っている方や、市町村の国民健康保険の方には、原則としてこの制度がありません。退職日の前後で変わるのは、次の点です。

  • 受給の状態: 退職日までに傷病手当金を受けているか、受けられる条件(業務外の病気やけがで仕事に就けず、連続3日の待期を終え、退職日も仕事に就けない状態)を満たしていること
  • 加入期間: 退職日まで、健康保険の被保険者期間が途切れず1年以上続いていること(転職で加入先が変わっていても、1日も空いていなければ通算される。任意継続や国民健康保険の期間は含まない)
  • 退職日の過ごし方: 退職日に出勤すると、原則として翌日以降の継続給付は受けられない
  • 退職後の状態: 退職後も同じ病気で仕事に就けない状態が続いていることが前提。いったん働ける状態になると、その後に再び働けなくなっても支給されない
  • 雇用保険の基本手当: 働く意思と能力があることが前提。病気で引き続き30日以上働けないときは受給期間を延ばす手続きがあり、最長で離職日の翌日から4年以内。延びるのは受け取れる期限で、給付日数は増えない
  • 健康保険: 退職後は、任意継続か国民健康保険への切り替え、またはご家族の扶養に入る手続きが要る

支給するかどうかを判断するのは、傷病手当金なら加入先の健康保険(保険者)、基本手当ならハローワークで、医療機関ではありません。医師が書くのは申請書の医師記入欄にある療養の状況と仕事に就けない期間で、当院では原則として、記載できるのは初診日以降の分です。制度の全体像は傷病手当金に、診断を受けたあとの退職・転職の考え方は適応障害は異動や転職で治る?環境調整の考え方にまとめてあります。

退職日を先に決めると、ここに挙げた条件を満たせるかどうかの余地が狭まります。

受診で決まること・決まらないこと

受診すると決まるのは、今の心と体の調子と、療養が必要かどうかです。医師は眠り・食事・気分・仕事での集中の具合と、いつから続いているかを聞きます。そのうえで、適応障害やうつ病などに当たるのか、まだ名前を付けずに経過を見る段階かを判断します。療養が必要だと判断すれば、休職のための診断書を書きます。

三宮駅前こころのクリニックでは、文書料は当院書式4,900円、会社などの指定書式6,600円(いずれも税込・診察料は別途)です。医師が必要と判断した場合、即日発行も可能です(診察内容や書式によっては後日のお渡しになります)。診断書に書けるのは診察で確認した状態で、当院では原則として、記載できる期間は初診日以降です。診断書の種類や注意点は診断書について、そのほかの料金は料金案内をご覧ください。

受診しても決まらないこともあります。休職できるかどうか、期間、休職中の賃金は、会社が就業規則に沿って決めます。診断書は医師の意見を伝える書類で、会社が休職を認める約束ではありません。就業規則の中身は医療機関には分からないので、ご本人が確かめることになります。退職すべきかどうかを医師が決めることもありません。傷病手当金を支給するかどうかは保険者が決めます。

診察では、今の体調に加えて、休職や退職についての希望や迷いもそのまま話してください。迷っていると伝えること自体が、診察の材料になります。

迷っている段階で手元にそろえておくとよいもの

休職か退職かで迷っている段階で手元にそろえておくとよいものは、就業規則の休職の規定・健康保険の種類・加入期間・有給休暇の残日数・相談できる相手の五つです。そろえてから受診しなければならないものではありません。分からないまま受診して、あとから確かめれば足ります。

  • 就業規則の休職の規定: 制度の有無、使える期間、休職中の賃金、期間が満了したときの扱い
  • 健康保険の種類: 協会けんぽ・健康保険組合・共済組合か、国民健康保険か(マイナポータルの資格情報、資格確認書、資格情報のお知らせで分かる)
  • 加入期間: 健康保険の被保険者期間が途切れず1年以上続いているか(前の勤め先の期間も、空白がなければ含む)
  • 有給休暇の残日数: 休職の前に使うか、退職日までに使うかで日程が変わる
  • 相談できる相手: 人事の窓口、産業医、社内の相談窓口があるか

就業規則の確認先は、社内の掲示やポータル、人事の窓口です。これらは、診断書を出すかどうかにも、傷病手当金を使えるかどうかにもかかわる情報です。知らないまま受診しても診察はできますし、「確認してから次回に」でも構いません。

よくあるご質問

退職してから受診しても、診断書はもらえますか。

受診はできますし、医師が必要と判断すれば診断書も作成できます。ただし診断書に書けるのは、診察した日以降の状態です。三宮駅前こころのクリニックでは原則として、記載できる期間は初診日以降です。退職後に傷病手当金を受けられるかどうかは、退職日までに受けられる状態になっていたかなどの要件で決まり、受診の有無だけでは決まりません。

休職制度がない会社です。退職するしかないですか。

休職制度がなくても、退職だけが選択肢ではありません。私傷病による休職は法律で義務づけられた制度ではないため、制度がない会社もあります。その場合も、有給休暇や欠勤で療養しながら体調を見る・業務の調整を相談する・退職を含めて考える、といった進め方があります。有給休暇や欠勤の間も在職中です。勤め先の健康保険にご本人が加入していれば、医師が仕事に就けない状態と認めた期間のうち、待期の3日を過ぎたあとの給与が出ない日について、在職中に傷病手当金を申請できます。支給の可否を判断するのは保険者です。当院では、療養が必要だという医師の意見を診断書に書くことはできますが、勤務先は、医師の意見やご本人との話し合いも踏まえて判断します。

「退職したら治った」という話は本当ですか。

適応障害のように原因がはっきりしている不調では、原因になっている状況から離れると症状が軽くなることはあります。一方で、離れても症状が続く方もいて、辞めたことで収入や転職活動の負荷が新しく生じることもあります。どちらになるかは、辞める前には分かりません。三宮駅前こころのクリニックでは、「辞めれば治る」とも「辞めてはいけない」とも言わず、今の状態と生活の両方を見て、離れ方と時期を一緒に整理します。

傷病手当金は、退職後ももらえますか。

要件を満たせば、継続給付として退職後も受けられます。要件は三つあります。退職日までに勤め先の健康保険に続けて1年以上加入していること、退職の時点で傷病手当金を受けているか受けられる状態にあること、退職後も同じ病気で仕事に就けない状態が続いていることです。退職日に出勤すると、原則として翌日以降は受けられません。在職中に勤め先の健康保険へご本人が被保険者として加入していたことが前提です。ご家族の扶養に入っている方や、市町村の国民健康保険の方には、原則としてこの制度がありません。退職後に国民健康保険へ切り替えた場合でも、要件を満たせば退職前の健康保険から受けられます。支給するかどうかは加入先の健康保険(保険者)が判断します。当院では、申請書の医師記入欄を診察に基づいて記入し、記載できる期間は原則として初診日以降です。

まだ診断がついていないのに、受診していいですか。

受診できます。診断名は診察の結果として付くもので、受診の条件ではありません。三宮駅前こころのクリニックの初診では、いつからどんな症状があるか、眠りと食事、仕事の状況とこれまでの経過をうかがいます。「辞めたいのか休みたいのか、自分でも分からない」と、そのまま伝えてください。お持ちいただくのはマイナ保険証または資格確認書とお薬手帳で、会社指定の診断書の書式があればそれもお持ちください。三宮駅前こころのクリニックのWEB予約は24時間受け付けています。

受診のご案内(休職か退職かで迷っている方)

三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区・JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科)では、休職か退職かで迷っている段階のご相談を受けています。診断名がまだ付いていなくても、出勤を続けていても、診察はできます。医師が心と体の調子を確かめ、療養が必要なら休職のための診断書や、傷病手当金申請書の医師記入欄に対応します。辞めるか休むかを診察で決めてもらう必要はなく、迷っている段階のままお話しいただいて構いません。

土日祝も診療しており、WEB予約は24時間受け付けています。※2027年1月より、日曜日の診療は第2・第4日曜のみとなります(第1・第3・第5日曜は休診)。はじめての方は初診の方へをご覧ください。

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参照・出典元

本記事は一般的な情報提供であり、個々の状況での判断を保証するものではありません。休職の可否や条件は勤務先の就業規則により、傷病手当金・雇用保険の支給可否は保険者やハローワークが判断します。制度の内容は変更されることがあるため、申請時に公式情報をご確認ください。診断書の発行は診察に基づく医師の判断によります。

この記事の執筆・監修
近藤 大貴(三宮駅前こころのクリニック 副院長)

近藤 大貴執筆|三宮駅前こころのクリニック 副院長/精神保健指定医

藤田医科大学卒業。名古屋市立大学病院こころの医療センター、豊川市民病院、稲美しんわ病院(副院長)にて精神科診療に従事。適応障害・うつ病など、働く方のメンタルヘルス診療に力を入れている。

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宇治田 直也(三宮駅前こころのクリニック 院長)

宇治田 直也監修|三宮駅前こころのクリニック 院長/精神保健指定医・公認心理師・日本医師会認定産業医

札幌医科大学卒業。神戸大学病院での勤務を経て精神科へ転向し、明石こころのホスピタル、戸田病院(医局長・診療部長)にて診療に従事。

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公開日 2026年11月4日/最終更新 2026年11月4日

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