
「明日から会社を休んでください」。診察室でそう言われて、ほっとしたはずなのに、家に帰ると落ち着かない。予定のない朝がきて、かえって焦ってしまう。休職に入ったばかりの時期には、そんな居心地の悪さがついてまわります。
休職中の一日に、決まった正解があるわけではありません。ただ、回復にはいくつかの段階があって、段階ごとに「今やっておきたいこと」と「まだ先送りにしていいこと」は変わってきます。適応障害で休職に入った方が、その段階に沿ってどう過ごすかをまとめました。
この記事の要点
- 適応障害の休職中の過ごし方は、回復の段階によって変わります。おおまかに、休みはじめの時期、回復してくる時期、復職に向けて準備する時期の3つに分けて考えます。
- 休みはじめの時期は、眠ることと食べることを最優先にし、それ以外の予定はできるだけ手放して構いません。
- 回復してくる時期は、生活のリズムを整えながら、「やってみたい」と思えることから少しずつ再開していきます。
- 復職に向けて準備する時期は、通勤に近い時間帯の外出などで、働く生活のリズムに体を慣らしていきます。復職の時期は主治医や勤務先と相談しながら決めます。
- 回復は一直線に進むとは限りません。調子のいい日と悪い日を行き来しながら進むことが多いため、段階の区切りは目安として受け取ってください。
- 休職できる期間や手続きは勤務先の就業規則によって決まります。休職中の収入は、要件を満たせば傷病手当金などの制度で支えられる場合があります。
三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区旭通・JR三ノ宮駅徒歩4分)は、神戸・三宮で適応障害の休職や復職のご相談をいただける精神科・心療内科です。診察を担当するのは院長・宇治田直也と副院長・近藤大貴(いずれも精神保健指定医)で、土日祝も診療しています。
適応障害という病気そのものの説明(症状・原因・治療)は適応障害のページに、休職や復職の手続きの流れは休職・復職の進め方のページにまとめてあります。この記事は、休職に入ったあとの過ごし方に絞ってお話しします。
休職中の過ごし方は、回復の段階で変わります
適応障害の休職中の過ごし方は、回復の段階によって変わります。休みはじめに必要なことと、復職が近づいた時期に必要なことは、まるで違うからです。ここでは、休みはじめ・回復してくる時期・復職準備の3つに分けて整理します。医学的に一律の区切りが決まっているわけではなく、説明のための便宜的な分け方です。なお、勤務先が行う職場復帰の支援については、厚生労働省が休業の開始から復職後のフォローまでを段階に分けた手引きを示しています。
段階の区切りは目安です
回復は、坂道を上るようにまっすぐ進むわけではありません。今週は調子がよかったのに、翌週はまた布団から出られない。そうした行き来をしながら、全体としてゆるやかに戻っていきます。
ですから、「3週間経ったから次の段階へ」と日数で区切る必要はありません。今どのあたりにいるのかは、診察のなかで一緒に確認していきます。ご自身だけで判定しようとすると、実際より先を急いでしまうことがあります。休職の期間も、症状の程度や職場の状況によって幅があり、あらかじめ何か月と決められるものではありません。
「何もしない」ことへの罪悪感について
休みはじめの時期に、休むこと自体をつらく感じる場合があります。同僚の顔が浮かぶ、給料をもらう資格がない気がする、自分だけ取り残されるように感じる。
けれど、休養は治療の一部です。骨折した足を固定するのと同じで、負荷を外している期間そのものに意味があります。「甘えているのではないか」という気持ちが強いときは、適応障害は甘えではないという記事もあわせて読んでみてください。

第1段階:眠ることと食べることを最優先に
休職に入って最初の時期は、心も体もエネルギーが底をついた状態です。この時期にやることは、眠ることと食べること。それ以外は、いったん自分に免除して構いません。
眠れるだけ眠ってください
10時間眠っても足りない、昼過ぎまで起きられない。休みはじめにそういう時期があっても、「寝すぎだ」と責めないでください。消耗した状態では、睡眠時間が長くなることがあります。
生活リズムを整えるのは、もう少し先の段階の課題です。今は起きる時刻を決めなくて構いません。ただし、昼夜が逆転した状態や極端に長い睡眠が続くとき、眠れない日が続くとき、眠っても日中の疲れが取れないときは、診察でお聞かせください。睡眠の状態は、ほかの病気やお薬の影響も含めて確認しておきたいところですし、対応の仕方も一つではありません。
食事も同じで、三食きちんとという形にこだわらなくて大丈夫です。食べられるものを、食べられるときに。入浴がしんどい日は、体を拭くだけにする日があってもかまいません。
会社との連絡は、窓口と頻度を決めておく
休みはじめにこたえるのが、職場からの連絡です。着信音が鳴るだけで動悸がする、という状態のまま療養を続けるのは大変です。
そこで、休職に入る前後で、連絡の窓口を一本に絞っておくことをおすすめします。上司ではなく人事に、あるいは産業医に。連絡の頻度も、「月に一度、メールで近況を送る」といった形で決めておくと、そのつど身構えずに済みます。やり取り自体がつらいときは、ご家族に間に入ってもらう方法もあります。
第2段階:生活のリズムと「したいこと」を戻していく
寝てばかりいることに飽きてきた、テレビや本の内容が少し頭に入るようになった、窓の外の天気が気になった。休むこと以外に関心が向きはじめたら、活動を少し戻せるかどうかを検討する時期にさしかかっています。判断の材料は睡眠や食事、動いたあとの疲れ方もあわせて見ますので、診察で経過を確認しながら進めていきます。
朝の光と、短い外出から
この時期に取り組みやすいのが、起きる時刻をだいたい一定にすることと、朝のうちに外の光を取り入れることです。起床後に明るい光を浴びることは、睡眠と覚醒のリズムを整える手がかりになります。無理に早起きをするというより、起きる時刻を整える段階になってから取り入れてください。
外出は、コンビニまで歩く程度で十分です。15分の散歩ができたなら、それは立派な一日の成果になります。ここで距離や歩数を目標にしはじめると、また「達成できたか」で自分を採点することになるので、時間や量は決めないほうがうまくいきます。
「すべき」より「したい」を先に
再開するなら、義務ではなく楽しみのほうからです。読みたかった漫画、録りためたドラマ、聴いていた音楽。受け身で楽しめるものから始めて、「おもしろい」「きれいだ」と感じられるかどうかを見ていきます。感情が動くようになってきたことは、回復を確かめるうえで意味のある手がかりです。
一方で、「せっかく時間があるのだから資格の勉強でも」と考えたくなる時期でもあります。気持ちは分かるのですが、この段階では負担になる場合があります。始める時期は診察でご相談ください。
第3段階:働く生活のリズムに体を慣らす
日常生活が支障なく送れるようになり、主治医から復職を視野に入れる話が出てきたら、準備の段階です。ここからは、働く生活に体を戻していく練習が中心になります。
通勤に近い時間帯で動いてみる
出勤していた時刻に起きて、身支度をして、図書館やカフェで数時間を過ごしてから帰る。いわゆる図書館通勤と呼ばれる方法です。決まった時刻に外へ出られるか、日中に集中していられるか、帰宅後にどれくらい疲れが残るか。実際にやってみると、体調の戻り具合が自分でも見えてきます。
復職の時期は、一人で決めなくて大丈夫です
復職できるかどうかは、ご本人の意欲だけでは決まりません。症状が安定しているか、生活のリズムが戻っているか、集中力が回復しているか。こうした点を診察で確認したうえで、主治医が判断します。会社側では産業医や人事が関わり、最終的な復職の決定は勤務先が行います。
復職の見極め方や職場との調整については、続編の適応障害の復職判断の記事でくわしく説明しています。復職後の働き方の配慮や、試し出勤・慣らし勤務といった仕組みは休職・復職の進め方のページにまとめてあります。
なお、休養を続けても症状が改善しない、かえって悪化する、職場から離れているのに落ち込みが続く、という場合もあります。そのときは、ストレスの原因が続いていないか、睡眠や身体の病気、お薬の影響、ほかの精神疾患が関わっていないかを含めて、状態をあらためて確認します。見立て自体を見直すこともあります。適応障害とうつ病の違いについては適応障害とうつ病の違いの記事でお話ししています。気になるときは、次の診察でそのままお伝えください。
焦りが出てきたときに、いったん止めたいこと
休職中に焦りが出てくると、動くことで不安を打ち消したくなります。その勢いで手を出すと回復が遠回りになりやすいものを、いくつか挙げます。禁止事項というより、「今はまだ」という保留のリストだと思ってください。
退職や転職を、いま決めてしまうこと
「あの職場にはもう戻れない」という考えが強くなることがあります。ただ、調子を崩している時期に出した結論は、体調が戻ってから振り返ると違って見える場合があります。急いで決める必要がなければ、体力が戻った時点でもう一度考える、という進め方をおすすめしています。なお、ハラスメントや安全にかかわる問題があるときは、療養とは別に早めの対応が必要です。診察でもお聞かせください。
異動や転職を含めた環境の変え方は、適応障害は異動や転職で治る?環境調整の考え方の記事で詳しくお話ししています。
お酒で眠ろうとすること
寝つけないからお酒を飲む、という形は避けたいところです。飲酒で一時的に眠気を感じても、睡眠の後半に眠りが浅くなったり、途中で目が覚めたりすることがあります。量が増えていく心配もあります。寝酒を睡眠対策にせず、眠れない日が続くときは診察でご相談ください。
業務メールやSNSを見にいくこと
心配のあまり社用メールを開きたくなるものですが、負担の原因になっていた情報に触れると、体はすぐに緊張の状態へ戻ります。パソコンは目に入らない場所にしまっておくのが安全です。
SNSも、この時期は距離を置いたほうが楽に過ごせます。人の楽しそうな様子や同僚の近況が目に入ると、自分だけが止まっているように感じられてしまいます。アプリの通知を切るだけでも、ずいぶん違います。
お金・手続き・ご家族の支え
療養に専念するうえで、収入と手続きの見通しが立っているかどうかは大きな違いになります。使える制度は、休みはじめの早い時期に確認しておくと安心です。
休職中の収入を支える傷病手当金
傷病手当金は、勤め先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合など)にご本人が被保険者として加入している方が、業務外の病気やけがで仕事に就けず、十分な給与を受けられないときに支給される制度です。ご家族の扶養に入っている方や、市町村の国民健康保険に加入している方には原則としてこの制度がなく、支給の可否を判断するのは加入先の健康保険(保険者)です。支給額の考え方や待期期間などの要件、申請の流れは適応障害と傷病手当金の記事で詳しく説明しています。
通院の負担を軽くする自立支援医療
通院が続きそうなときは、対象となる保険診療の自己負担が原則1割になる自立支援医療(精神通院医療)という制度があります。対象や申請の手順は自立支援医療のページをご覧ください。
休職に必要な診断書について
休職の手続きには、勤務先へ提出する診断書が必要になるのが一般的です。当院では、休職のための診断書の即日発行も可能です(医師が必要と判断した場合。診察内容や書式によっては後日のお渡しになります)。診断書は自費で、当院書式が4,900円、会社などの指定書式が6,600円です。書かれる内容は適応障害の診断書の記事で説明しています。なお、休職できる期間や手続きの進め方は勤務先の就業規則の定めによりますので、規定もあわせてご確認ください。
ご家族へ:励ますより、安心させる
ご家族にできることは、そばで生活を回しやすくしておくことです。「ゆっくり休んでね」と休むことを肯定する、食事や家事をそっと引き受ける、静かに休める場所を確保する。それだけで、療養はずいぶんしやすくなります。
反対に、回復を急かす言葉は本人を追いつめやすくなります。「いつ治るの」「いつから働けそう」と聞きたくなるのは自然なことですが、答えられないことを尋ねられるのは、休んでいる側にはこたえます。「頑張って」という励ましも、すでに頑張りきったあとの人には重く届きます。
支えるご家族自身が疲れてしまうこともあります。ご希望があれば診察に同席していただけますし、ご本人の同意がある場合は、ご家族のみでのご相談(家族相談)も承っています。家族相談は健康保険の対象外で、11,000円(税込・20分)です。最新の料金は料金のご案内でご確認ください。
よくあるご質問
適応障害で休職中は、何をして過ごせばいいですか?
適応障害の休職中の過ごし方は、回復の段階によって変わります。休みはじめの時期は、眠ることと食べることを最優先にして、それ以外の予定は手放して構いません。回復してくると、起きる時刻をだいたい一定にし、朝の光を浴び、短い外出や好きなことを少しずつ再開していきます。復職が視野に入る時期になったら、通勤に近い時間帯で外出する練習を始めます。今どの段階にいるかは、診察で一緒に確認していきます。
休職期間は、どれくらいが目安ですか?
適応障害の休職期間は個人差が大きく、数週間で戻れる方から、数か月あるいはそれ以上かかる方まで幅があります。症状の程度、ストレスの原因が続いているかどうか、職場側の調整がどこまで進むかによって変わってきます。診断書に記載する療養期間は、診察のなかで状態を確認しながら決め、必要があれば延長します。ご自身で期限を区切らず、主治医とご相談ください。なお、休職できる期間や条件は勤務先の就業規則の定めによります(規定の内容は勤務先によって異なります)。
休職中に外出や旅行をしてもいいですか?
体調が戻ってきた時期には、短い外出が気分転換になったり、活動量や疲れ方を確かめる機会になったりします。景色を見て気持ちが動いたと感じられることも、経過を見ていくうえでの手がかりの一つです。ただ、休みはじめの消耗が強い時期は、外出そのものが負担になることもあります。計画しているものがあれば、診察でお話しください。あわせて、休職中の過ごし方について勤務先に取り決めがある場合もありますので、就業規則や休職時の案内もご確認ください。
何もする気が起きません。怠けているのではないでしょうか?
休職中に何もする気が起きないのは怠けではなく、エネルギーが消耗しきった状態で起こる自然な反応です。休みはじめの時期に「何もできない」と感じるのは、それだけ消耗していたということでもあります。動けるようになってきたことは、経過を見ていくうえでの手がかりの一つになります。休むことに罪悪感が強く出るときは、その気持ち自体を診察でお話しいただければ、一緒に整理していけます。
神戸・三宮で、適応障害の休職や診断書の相談はできますか?
はい、ご相談いただけます。三宮駅前こころのクリニック(〒651-0095 兵庫県神戸市中央区旭通4丁目1-4 シティタワープラザ 3階)は、JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科です。休職のための診断書は即日発行も可能です(医師が必要と判断した場合。診察内容や書式によっては後日のお渡しになります)。診療時間は9:30〜13:30/15:00〜19:00で、土日祝も診療しています。WEB予約は24時間受け付けており、お電話は078-891-8558です。なお、提携駐車場はございませんので、お車の場合は近隣の有料駐車場をご利用ください。
神戸・三宮で、休職中のご相談を
三宮駅前こころのクリニックは、JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科です。診療時間は9:30〜13:30/15:00〜19:00で、土日祝も診療しています。WEB予約は24時間受け付けています。
休職中は、「これでいいのだろうか」と一人で確かめようがない時間が続きます。今どのあたりまで戻ってきているのか、次に何をしてみるか。診察でお聞かせいただければ、そのつど一緒に見ていけます。
診察の時間だけでは気持ちを整理しきれないときは、医師の判断のうえで、公認心理師・臨床心理士によるカウンセリング(月・火・木・土曜日、初回25分3,300円・2回目以降50分6,600円、税込・自費診療)をご案内することもできます。詳しくは心理カウンセリングのご案内をご覧ください。
休職に入ったばかりの方も、復職が近づいてきた方も、途中で不安になった方も、WEBまたはお電話でご予約のうえご相談ください。
参照・出典元
休職中の「これでいいのかな」を、
一人で抱えないでください
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