
休職を決めたあと、多くの方が次にぶつかるのがお金のことです。給与は止まるのに、家賃も保険料も待ってくれません。「療養に専念してください」と言われても、貯金がいつまでもつか分からない状態では、落ち着いて休むどころではないと思います。
こうしたときに支えになるのが、健康保険の傷病手当金です。適応障害も対象になり得ますが、誤解が生じやすい制度でもあります。受診する前の休業期間についても医師が証明できると思われていたり、会社に出す診断書だけで申請できると思われていたりすることがあります。このページでは、当院の診察でよくいただく質問をもとに、適応障害で休職する方がつまずきやすい点を整理します。
この記事の要点
- 適応障害でも傷病手当金の対象になり得ます。支給の可否は病名ではなく、働けない状態(労務不能)かどうかなどの要件で判断されます。
- 対象になるのは、勤め先の健康保険(協会けんぽ、組合健保、公務員の共済組合など)にご本人が被保険者として加入している方です。ご家族の扶養に入っている方や、市町村の国民健康保険に加入している方には、原則としてこの制度がありません。
- 医師が労務不能と証明できるのは、実際に診察した日(初診日)以降の期間です。受診より前にさかのぼって証明することはできません。
- 会社に提出する診断書(自費)と、傷病手当金支給申請書の医師記入欄(健康保険が適用されます)は、別の書類です。
- 傷病手当金が支給される期間は、支給が始まった日から通算して1年6か月ぶんです。傷病手当金が支給されなかった期間は、この通算期間に含まれません。
- 支給するかどうか、いくら支給するかを決めるのは、加入先の健康保険(保険者)です。医療機関が決めるものではありません。
三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区旭通・JR三ノ宮駅徒歩4分)は、神戸・三宮で適応障害の休職や傷病手当金の書類についてご相談いただける精神科・心療内科です。診察を担当するのは院長・宇治田直也と副院長・近藤大貴(いずれも精神保健指定医)で、土日祝も診療しています。
なお、傷病手当金の制度そのもの(支給の条件、金額の計算、待期期間、支給される期間、申請の流れ)については傷病手当金のページでくわしく説明しています。数字や条件を確認したい方は、あわせてご覧ください。適応障害という病気の全体像は適応障害のページにまとめてあります。
適応障害は傷病手当金の対象になるのか
適応障害でも傷病手当金の対象になり得ます。病名で可否が決まる制度ではないためです。
判断されるのは病名より「働けない状態か」
傷病手当金の要件は、業務外の病気やケガのために働けない状態(労務不能)にあることなどで、心の病気も体の病気と同じように扱われます。適応障害で仕事に就けない状態が続いている場合は、傷病手当金の対象となる可能性があります。ただし待期期間や休業中の給与の有無など他の要件もあり、最終的な支給可否は加入先の保険者が判断します。
傷病手当金は原則として業務外の病気やケガが対象です。仕事や通勤が主な原因と考えられる場合は労災保険の対象となる可能性があり、該当するかどうかは労働基準監督署などが判断します。勤務先や労働基準監督署、加入先の健康保険へご確認ください。なお当院は労災保険の指定医療機関ではありません。
もう一つ、大事なことを。支給するかどうか、いくら支給するかを決めるのは、ご自身が加入している健康保険の保険者です。医療機関ではありません。当院がお手伝いできるのは、診察したうえで、療養が必要な状態であることを申請書の医師記入欄に記載することまでです。「病院で書いてもらえたから確実に支給される」とは限らない点は、あらかじめ知っておいていただけると安心です。
国民健康保険には、原則として傷病手当金がない
意外と見落とされやすいのが、加入している健康保険の種類です。主な対象は、協会けんぽ・健康保険組合などの被用者保険の被保険者です。公務員等が加入する共済組合にも同様の給付がありますが、要件や手続きは加入先によって異なるため、所属先へご確認ください。ご家族の扶養に入っている方は、被保険者本人ではないため対象になりません。
一方、自営業やフリーランス、学生の方など、市町村の国民健康保険に加入している場合は、原則として傷病手当金の仕組みがありません(国民健康保険組合は組合ごとに扱いが異なります)。保険証を手に取って、どの保険に入っているかを確認するところから始めてみてください。
対象にならない場合でも、医療費の負担を軽くする制度は使えることがあります。通院が続く場合の自立支援医療については、この記事の後半で説明します。
これらの要件や支給額の考え方は健康保険法にもとづくもので、協会けんぽに加入している方は全国健康保険協会の公式サイトでも確認できます。制度の全体像は厚生労働省の資料でも公表されています。
勤め先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に、ご自身が「本人」として加入していますか?
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はい
対象になり得ます
休み始めの3日間のルールや、休んでいる間のお給料の有無など、ほかの条件もあわせて、最終的には加入先の健康保険が判断します。
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ご家族の扶養に入っている
対象になりません
ご本人としての加入(被保険者)ではないためです。
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公務員等(共済組合)
よく似た手当があります
条件や手続きは、加入先へご確認ください。
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市町村の国民健康保険
原則、傷病手当金の仕組みがありません
一部の国民健康保険組合には、制度がある場合もあります。
支給されるかどうか・いくらになるかを決めるのは、加入先の健康保険です(病院やクリニックではありません)。
受診が遅れると、休んだ期間をさかのぼって証明できない
医師が労務不能だったと証明できるのは、実際に診察した日、つまり初診日以降の期間に限られます。受診より前にさかのぼって「あの日も働けない状態でした」と書くことはできません。
「先週からつらくて会社を休んでいるので、その分も書いてください」というご相談をいただくことがあります。お気持ちはよく分かるのですが、これは当院の方針というより、診断という行為の性質によるものです。診ていない日のことを、医師は証明できません。
休み始めてからしばらく様子を見て、それでも回復しないから受診する、という順番になりがちなのは自然なことだと思います。ただ、その待った日数のぶん、申請できる期間の始まりが後ろにずれていきます。すでに会社を休んでいる、あるいは近いうちに休むかもしれない。そう感じている段階で一度受診しておくことが、結果的にご自身を守ります。
同じ考え方は診断書にもあてはまります。適応障害の診断書について、書かれる内容や費用、受け取りまでの流れは適応障害の診断書の記事でくわしく説明しています。当院で扱う書類全般の取り扱いは診断書についてのページにまとめてあります。
適応障害の診断書と傷病手当金の申請書は別の書類
会社に提出する診断書と、傷病手当金の申請書に医師が記入する欄は、提出先も費用の扱いも異なる別の書類です。
「診断書をもらえば傷病手当金の手続きはできますよね」と聞かれることがありますが、混同されやすいところなので、分けて説明します。
会社に休職を申し出るための診断書
療養が必要であることを勤務先に伝える書類です。休職できるかどうか、どのような手続きを踏むかは勤務先の就業規則によりますが、多くの場合は診断書の提出を求められます。当院では即日発行も可能です(医師が必要と判断した場合。診察内容や書式によっては後日のお渡しになります)。
傷病手当金支給申請書の医師記入欄
こちらは保険者へ提出する申請書の一部で、療養担当者記入欄(医師の意見欄)に、療養の状況と労務不能と認めた期間を医師が記載します。申請書は本人記入欄・事業主の証明欄・医師の記入欄で構成されていて、それぞれの記入がそろって初めて提出できる書類です。用紙は勤務先の人事や総務でもらうか、加入先の健康保険の窓口から入手できます(協会けんぽに加入の方は公式サイトからダウンロードできます)。
費用の扱いも異なります
一般の診断書は自費で、当院の文書料は当院書式が4,900円、会社などの指定書式が6,600円です。これに対して、傷病手当金支給申請書への医師の記入(傷病手当金意見書交付料)は健康保険が適用され、3割負担の方で300円ほどです。このほかに診察料などが別途かかります。同じ「書いてもらう書類」でも扱いが違うわけです。金額は改定されることがありますので、最新のものは診断書についてのページまたは受付でご確認ください。
休職の流れ全体は休職についてのページにまとめています。
適応障害で休職した場合、いくら受け取れて、いつ入金されるのか
1日あたりの支給額は、原則として支給開始日前12か月の標準報酬月額(給与をもとに決められる区分)の平均を30で割った額の3分の2です。普段の手取り給与を単純に3分の2にした金額ではありません。休業中に給与が支払われる場合は、不支給または差額の支給となることがあります。
そして、休んだその月からすぐ振り込まれるわけでもありません。ここも心の準備が要るところです。
申請は1か月ごとに行うのが一般的です。ある月ぶんを申請するには、その期間が終わってから医師と事業主がそれぞれの欄を記入し、そのうえで保険者へ提出することになります。記載漏れや添付書類の不足があると差し戻され、さらに時間が延びます。
つまり、入金までには少なくとも次の3つの段取りぶんの時間がかかります。①申請する月の期間が終わるのを待つ、②医師と事業主がそれぞれの欄に記入する、③保険者が書類を審査する。実際に何日かかるかは保険者や申請の時期によって異なりますので、見通しは加入先の健康保険にご確認ください。
加えて、休み始めの3日間は待期期間として支給の対象外です(この3日は連続している必要がありますが、土日祝や有給休暇でもかまいません)。
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休み始め
最初の3日間は「待期期間」といって、支給の対象になりません。3日続けて休む必要がありますが、土日祝や有給休暇でもかまいません。
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申請したい月が終わるのを待つ
申請は、1か月分ずつまとめて行うのが一般的です。
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医師と勤務先がそれぞれの欄に記入
申請書には、ご本人・勤務先・医師がそれぞれ書く欄があります。全部そろったら、加入先の健康保険へ提出します。
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加入先の健康保険が書類を審査
書き漏れや書類の不足があると差し戻しになり、そのぶん時間がかかります。
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審査結果の通知・入金
支給が決まった場合、指定の口座に振り込まれます。かかる日数は加入先や時期によって違うため、目安は加入先の健康保険にご確認ください。
休んだその月にすぐ振り込まれるわけではありません。当座の生活費の見通しは、あらかじめ立てておくと安心です。
当座をどう組み立てるか
無収入の期間をどう乗り切るかは、休職を決める前に一度考えておく価値があります。有給休暇が残っていれば、その使い方を勤務先と相談する。当面の固定費を洗い出して、削れるものを見ておく。家族に事情を伝えておく。療養に入ってからでは、こうした段取りを組む気力が出にくくなります。
医療費の面では、通院が続く場合に自立支援医療(精神通院医療)を利用できることがあります。支給認定を受けると、受給者証に記載された指定医療機関・薬局などで受ける、精神疾患に関係する保険診療(精神科・心療内科への通院や処方薬など)の自己負担が原則1割になります。所得等に応じて月額の上限も設けられます。自由診療や、精神疾患と関係のない治療は対象外です。当院は指定自立支援医療機関ですが、利用にあたっては当院を受給者証の対象医療機関とする手続きが必要です。申請の窓口や必要書類は自立支援医療のページでご案内しています。
適応障害で復職したあと、また休むことになったら
適応障害では、復職してしばらく経ってから調子を崩す方もいらっしゃいます。「一度もらってしまったから、もう使えないのでは」と心配される方が多いのですが、傷病手当金は通算で数える制度です。
支給される期間は、支給が始まった日から通算して1年6か月ぶんです。傷病手当金が支給されなかった期間は、この通算期間に含まれません。たとえば半年ぶんの支給を受けたあとに復職し、その後また同じ病気で休むことになった場合、残りの支給可能日数があれば、再び支給される場合があります。ただし支給要件を満たすかどうか、同一・関連する傷病として扱うかどうかは、保険者が個別に判断します。
また、この1年6か月は原則として同じ病気について通算されるもので、同じ病名で改めて1年6か月ぶんが与えられるわけではありません。ただし、いったん治癒したのち相当期間就労して再発した場合などは、別の傷病として扱われることがあります。判断は保険者が行います。
もう一つ、注意しておきたいことがあります。復職後の時短勤務やならし勤務の期間に傷病手当金が支給されるかどうかは、労務不能と認められるかどうかを含めて、保険者が個別に判断します。支給されないこともありますので、支給を当てにして復職の時期を決めるのは避けたほうが安全です。体調が十分に整わない段階で復職すると、再び症状が悪化することもあります。復職の時期や働き方は、主治医や勤務先と相談しながら決めていきましょう。復職の見極め方は復職についてのページでくわしく説明しています。
診察でお伝えいただきたいこと
手続きをなるべく滞りなく進めるために、診察のときに次のことを教えていただけると助かります。
- 加入している健康保険の種類(勤め先の健康保険か、共済組合か、国民健康保険か)
- 会社に申し出た休職の開始日
- 今回申請したい期間(何月何日から何月何日ぶんを申請するかは、ご本人と勤務先で確認して決めていただきます。医師記入欄の労務不能期間は、その申請期間について診察に基づき医師が判断して記載するため、申請を希望する期間と一致しないことがあります。受診前に会社へ確認しておくとスムーズです)
- 他院に通院していた場合はその経過(申請期間が転院の前後にまたがる場合は、診療した期間に応じて前の医療機関と当院の双方の記載が必要になることがあります。加入先の保険者へご確認ください)
- 提出先と締切(会社の締日にあわせて動くことが多いため)
書類のことで頭がいっぱいになってしまう方もいらっしゃいますが、優先すべきはご自身の回復です。分からないところは診察でうかがいますので、整理できていない状態でお越しいただいて構いません。
よくあるご質問
適応障害でも傷病手当金はもらえますか?
病名で決まる制度ではなく、業務外の病気のために働けない状態であることなどが要件です。適応障害だから対象外ということはありません。ただし待期期間や休業中の給与の有無など他の要件もあり、支給の可否や金額を決めるのは加入先の健康保険(保険者)で、医療機関ではありません。当院では診察のうえ、申請書の医師記入欄の作成に対応しています。
国民健康保険でも受け取れますか?
市町村の国民健康保険には、原則として傷病手当金の仕組みがありません。主な対象は、協会けんぽ・健康保険組合などの被用者保険にご本人が被保険者として加入している方です(ご家族の扶養に入っている方は対象になりません)。公務員等が加入する共済組合にも同様の給付がありますが、要件や手続きは加入先によって異なります。まずは保険証で加入先をご確認ください。
受診する前に休んでいた期間も証明してもらえますか?
できません。医師が労務不能と証明できるのは、実際に診察を行った日(初診日)以降の期間です。休み始めてから受診までが空くと、その分だけ申請できる期間の始まりが後ろにずれます。我慢せず早めにご相談ください。
適応障害の診断書と傷病手当金の申請書は、両方必要ですか?費用はいくらですか?
用途が異なる別の書類です。会社に休職を申し出る診断書は自費で、当院書式4,900円、会社などの指定書式6,600円です。傷病手当金支給申請書への医師の記入(傷病手当金意見書交付料)は健康保険が適用され、3割負担の方で300円ほどです。このほかに診察料などが別途かかります。金額は改定されることがありますので、最新のものは診断書についてのページをご覧いただくか、受付でおたずねください。診断書そのものについては適応障害の診断書の記事でくわしく説明しています。
適応障害で復職したあとに再発した場合、傷病手当金はまた受け取れますか?
傷病手当金は、支給が始まった日から通算して1年6か月ぶんが上限で、傷病手当金が支給されなかった期間はこの通算期間に含まれません。残りの支給可能日数があれば、再び支給される場合があります。ただし支給要件を満たすかどうか、同一・関連する傷病として扱うかどうかは保険者が個別に判断します。原則として同じ病名で改めて1年6か月ぶんが与えられるわけではありませんが、いったん治癒したのち相当期間就労して再発した場合などは、別の傷病として扱われることがあります。制度の詳細は傷病手当金のページをご覧ください。
神戸・三宮で、適応障害の傷病手当金の書類を相談できますか?
三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区旭通・JR三ノ宮駅徒歩4分)は精神科・心療内科の診療所で、診察のうえ、傷病手当金支給申請書の医師記入欄の作成に対応しています。土日祝も診療しており、WEB予約は24時間受け付けています。お電話は078-891-8558です。なお、支給の可否と金額を決めるのは加入先の健康保険(保険者)で、医療機関ではありません。
神戸・三宮で休職とお金の相談を
三宮駅前こころのクリニックは、JR三ノ宮駅から徒歩4分の精神科・心療内科です。土日祝も診療しているため、平日に休みを取りづらい方もご相談いただけます。WEB予約は24時間受け付けています。
休職中の収入への不安が、安心して療養することを難しくする場合があります。「休みたいけれど、生活が立ち行かないから休めない」と感じている方は、使える制度があるのかどうかだけでも、早い段階で知っておいてください。
診察では、今の状態を確認したうえで、休養が必要かどうか、どの書類が要るのかを一緒に整理します。「これくらいで受診していいのだろうか」と迷っている段階のご相談も歓迎しています。
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休みたいけれど生活が心配、という段階でも大丈夫です。使える制度があるかどうかを含めて、今の状態から一緒に整理します。土日祝も診療しています。

