
「いつまでこの状態が続くのだろう」。適応障害の療養中、先の見えなさは、症状そのものと同じくらい心を削ります。検索すると「半年で治った」の隣に「2年治らない」が並んでいて、かえって不安になった方もいるかもしれません。
治るまでの期間に幅があるのには、この病気の性質からくる理由があります。期間が何で決まるのか、回復の兆候はどう現れるのか、長引くときや再発したときに何を確かめるか。気になるところからお読みください。
この記事の要点
- 適応障害が治るまでの期間は一人ひとり異なり、「何か月で治る」と最初から決められるものではありません。ストレスの原因から離れられるか、変えられるかが、経過を大きく左右します。
- 米国精神医学会の診断の手引きでは、ストレスの原因とその影響が終わったあと、症状が6か月を超えて続かないことが診断のうえでの目安とされています(6か月以内に必ず治るという意味ではありません)。原因が続いているあいだは、症状が長引くこともあります。
- 適応障害の回復の兆候は、眠れる日が増える、食事をおいしいと感じる、好きなことに気持ちが動くといった、生活の小さな変化として現れることがあります。現れ方は人によって異なり、一日の調子ではなく週の流れで眺めるのがこつです。
- 回復は一直線には進まず、良い日と悪い日を行き来しながら戻っていく経過をとることがあります。揺り戻しがあること自体は、治っていなかった証拠ではありません。
- 適応障害が2年、3年と治らないまま続くときは、ストレスの原因が残っていないか、新しい負荷や別の病気が関わっていないかを、診断を含めて見直します。ご自身の努力が足りないせいではありません。
- 適応障害は、一度回復したあとも、数年たってから似た症状が出てくることがあります。適応障害の再発時の傷病手当金は、条件によって別の傷病として扱われる場合があり、判断は加入先の健康保険が行います。
三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区旭通・JR三ノ宮駅徒歩4分)は、神戸・三宮で適応障害の経過や再発のご相談をいただける精神科・心療内科です。診察を担当するのは院長・宇治田直也と副院長・近藤大貴(いずれも精神保健指定医)で、土日祝も診療しています。
適応障害という病気そのものの説明(症状・原因・治療)は適応障害のページにまとめてあります。この記事では、治るまでの時間の経過と、そのあとの再発への備えに絞ってお話しします。
適応障害が治るまでの期間は、何で決まるのか
適応障害が治るまでの期間は、一人ひとり異なります。診察で「何か月で治りますか」と聞かれたとき、すぐに数字でお答えできないのには理由があります。この病気の経過が、症状の重さだけでなく、ストレスの原因をどうできるかに左右されるからです。
適応障害は、仕事や人間関係など、特定できるストレスの原因と関連して心身の症状が現れ、生活や仕事に支障が生じている状態です。ただし、ストレスの原因があるだけで診断が決まるわけではなく、症状の程度や経過、ほかの病気で説明できないかも診察で確認します。原因から距離を取れた場合と、原因がそのまま続いている場合とでは、そのあとの道のりが変わってきます。
「平均〇か月」とお答えしていない理由
休職期間や治療期間の平均を調べたくなるお気持ちは、よく分かります。ただ、平均の数字を知っても、ご自身の見通しにはつながりにくいのが実際のところです。原因が解消できる状況かどうか、職場の調整がどこまで進むか。経過を左右する条件が人によって違いすぎるため、当院では「平均で〇か月です」というお答えをしていません。
治る確率も同じです。「治る」の基準をどこに置くか(症状が消えること、復職できること、薬をやめられること)で答えが変わってしまうため、数字でお示しするのは難しいというのが正直なところです。
診断の手引きにある経過の目安
目安が何もないわけではありません。米国精神医学会の診断の手引きでは、ストレスの原因とその影響が終わったあと、症状が6か月を超えて続かないことが、診断のうえでの目安として整理されています。これは診断を区分けするための目安で、「6か月以内に必ず治る」という意味ではありません。
この整理のとおり、原因が続いているあいだは、症状も続くことがあります。そのため、業務量の見直しや配置転換、休職といった環境調整は、治療の重要な選択肢になります。ただ、すぐに環境を変えられない事情がある場合もあります。そのときは、休養のとり方や心理的な支援、症状への対応を含めて、いまできることを診察で一緒に検討します。環境の変え方の選択肢は適応障害と環境調整の記事で詳しくお話ししています。
回復の兆候はどんな形で現れるか
適応障害の回復の兆候は、劇的な変化としてではなく、生活の細部に現れることがあります。朝、目が覚めたときの体の重さがいつもと少し違う。食事をおいしいと感じられる。録りためた番組を最後まで見られた。仕事のことを考えない時間が増えた。こうした小さな変化が積み重なっていくのが、回復の手がかりです。現れ方や順序は人によって異なり、一つの変化だけで回復を判定するものではありません。
症状の側から見ると、涙や動悸などが出る場面が減る、出てもあとを引く時間が短くなる、という形で現れることもあります。
一日の調子ではなく、週の流れで見る
きょう一日の調子で判定しようとすると、翌日の落ち込みで振り出しに戻った気持ちになってしまいます。そこで、一日の点ではなく、週の流れで眺めてみる方法があります。先週と比べてどうか、眠れた日が週に何日あったか。簡単なメモや睡眠の記録があると、変化に気づく助けになり、診察でも経過を確かめやすくなります。
休職して療養している方は
休職中の回復には段階があり、段階に応じて過ごし方も変わります。段階ごとの過ごし方は適応障害の休職中の過ごし方の記事でまとめていますので、休職中の方はあわせてご覧ください。
治ったと思ったのに、また揺り戻しが来るとき
順調に戻っていたはずなのに、ある朝また起き上がれなくなった。そんな揺り戻しに出会うと、「治っていなかったのか」と落胆するかもしれません。ただ、回復は右肩上がりの直線では進みません。良い日と悪い日を行き来しながら、全体としてゆるやかに戻っていく経過をとることがあります。
揺り戻しには、きっかけが見つかる場合もあります。調子が上向くと、たまっていた用事を片づけ、遅れを取り戻そうと予定を詰めたくなります。その反動で数日動けなくなる、という形です。失敗と捉えて自分を責めるより、直前に何があったかを振り返って、負荷を少し戻してみてください。
数日で持ち直す波なのか、以前と同じ症状が週の単位で続いているのか。この違いは、ご自身では判断がつきにくいところです。続いていると感じたら、次の診察を待たずにご相談いただいて構いません。復職したあとに波が出たときの考え方は、適応障害の復職判断の記事でもお話ししています。
2年、3年と長引くときに考えること
適応障害が2年、3年と治らないまま続くときには、確かめられる背景があります。ストレスの原因が実は残っていないか、新しい負荷や別の病気が関わっていないかを、診断を含めて見直していきます。「自分はもう治らないのではないか」と調べている方に、先にお伝えしておきます。長引いていることは、あなたの努力が足りない証拠ではありません。
確かめたい4つのこと
- ストレスの原因が、実際には解消していない(部署は変わったが業務量は同じ、負担になる相手との接点が残っている、家庭の事情が続いているなど)
- 新しい環境に慣れること自体が、別の負荷になっている
- 睡眠の問題、体の病気、飲酒、服用中の薬が症状に影響している
- うつ病や不安症などほかの病気、または併存する状態があり、診断や治療方針の見直しが必要になっている
原因から離れても良くならないのだからうつ病だ、と単純に決まるわけではありません。どこに負荷が残っているのかを一つずつ確かめたうえで、必要なら診断や治療方針を見直します。環境を変えたのに楽にならないときの確認の仕方は、適応障害と環境調整の記事で詳しく書きました。
長く続く不調を「甘え」と言われて、我慢を重ねてきた方もいるかもしれません。そう感じている方は適応障害は甘えではないという記事も読んでみてください。
つらさが深くなっているときは
長引くつらさの底で、「消えてしまいたい」という考えが浮かぶことがあります。今すぐ自分を傷つけてしまいそうなときは、119番または最寄りの救急医療機関にご連絡ください。差し迫った危険はないものの誰かに話を聞いてほしいときは、よりそいホットライン(0120-279-338・24時間・通話料無料)にご相談いただけます。こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)もあります(通話料がかかります。受付日時は地域によって異なります)。一人で抱えず、ご家族など身近な方に知らせることも助けになります。
数年後にまた同じような症状が出てきたら
適応障害は、一度回復して症状が落ち着き、仕事を続けていた方でも、数年たってから似た症状が出てくることがあります。以前と同じ病気の再発なのか、新しいストレスへの新たな反応なのかは、診察で経過をうかがいながら確認します。
以前のサインを手がかりにする
適応障害の再発に気づく手がかりは、初回のご自身の経過のなかにあります。眠りが浅くなる、日曜の夜に気分が沈む、出勤前に涙や動悸が出る、好きだったものに気持ちが動かない。前回、どんな順番で不調が進んだかを思い出せるなら、同じ変化が重なってきた時点で立ち止まってみてください。
こうした変化が2週間ほど続くときは、受診をご検討ください。2週間は目安のひとつで、期間が短くても生活や仕事への支障が強いときは、早めのご相談をおすすめします。ご自身で判断しにくいときも、期間にかかわらずご相談ください。出勤前に体に出るサインについては仕事に行こうとすると涙や吐き気が出る記事で詳しくお話ししています。
再発したときの傷病手当金
再発して再び仕事を休む場合、以前に傷病手当金を受け取っていても、もう使えないと決まったわけではありません。傷病手当金は、会社員の方などが勤め先の健康保険にご本人として加入している場合の制度で、支給期間は支給が始まった日から通算して1年6か月ぶんです。支給されなかった期間はこの通算に含まれません。ただし、残りの日数があれば自動的に受け取れるわけではなく、働けない状態であることなどの要件を改めて満たす必要があります。また、いったん治癒したのち相当期間働いてから再発したときは、別の傷病として扱われる場合があり、期間だけで一律に決まるものではありません。同一の傷病か別の傷病かを含め、支給の可否を判断するのは加入先の健康保険(保険者)です。制度のくわしい流れは適応障害と傷病手当金の記事で説明しています。
なお、再び休職できるかどうかや期間は、勤務先の就業規則によります(私傷病による休職は、法律ですべての勤務先に義務づけられた制度ではありません)。
再発に早く気づき、対処するための備え
再発を完全に防ぐ方法はありません。ただ、変化に早く気づき、負荷を調整したり相談したりするための備えはできます。それは特別なことではなく、生活に近いところにあります。
自分に現れやすい変化を書き出しておく
体調に余裕があるときにできるのが、振り返りです。どんな状況で負荷がかかったか、どんな順番で症状が出たか、何が回復の助けになったか。負担にならない範囲の、数行のメモで構いません。次に似た状況が来たとき、そのメモが早めのサインに気づくための物差しになります。
無理の戻りを点検し、話せる相手を決めておく
働き方に以前と同じ無理が戻っていないかを、ときどき点検してください。残業の量や、断れないままの引き受け方は、その分かりやすい目印です。あわせて、体調の変化を話せる相手を決めておくことも備えになります。家族でも、上司や産業医でも、主治医でも構いません。変化を口に出せる先があるだけで、一人で抱え込みにくくなります。
通院と薬の終えどきは、相談しながら
症状が落ち着いてくると、通院や薬をいつまで続けるかが気になってきます。終えどきは、症状の経過と生活の状況を見ながら、診察で相談して決めていきます。薬の種類によっては、急にやめると離脱症状や症状の再燃が起こることがあります。減らし方は薬や経過によって異なるため、自己判断で変えず、減らしたい気持ちも含めて診察でお聞かせください。
備えていても、再発することはあります。それは備えが無駄だったという意味ではありません。早く気づけたこと自体が、対処の入口になります。
よくあるご質問
適応障害は、どれくらいの期間で治りますか。
適応障害が治るまでの期間は一人ひとり異なり、何か月で治ると最初から決められるものではありません。ストレスの原因から離れられるか、変えられるかによって、経過が大きく変わるためです。米国精神医学会の診断の手引きでは、原因とその影響が終わったあと、症状が6か月を超えて続かないことが目安とされています。ただし、これは診断を区分けするための目安で、6か月以内に必ず治るという意味ではありません。原因が続いているあいだは長引くこともあるため、環境をどう整えるかを含めて、見通しは診察で一緒に考えていきます。
適応障害が治るきっかけは、どんなものですか。
適応障害の回復は、ストレスの原因との距離が変わったときに動きだすことがあります。休職して職場から離れた、業務量が調整された、異動で人間関係が変わったなど、環境の変化が転機になる場合があります。十分な休養で心身の消耗が回復してくることも、その一つです。ただし、きっかけは一つとは限らず、環境を変えれば必ず良くなるというものでもありません。何が負荷になっているかは人それぞれのため、診察でご自身の状況を整理しながら、変えられるところを一緒に探していきます。
治ったと思っていたのに、また調子が悪くなりました。治っていなかったのでしょうか。
治っていなかったと決めつける必要はありません。適応障害の回復は一直線ではなく、良い日と悪い日を行き来しながら進む経過をとることがあります。調子が上向いた時期に活動量を一気に増やした反動で、数日落ち込む形の揺り戻しもあります。見ていただきたいのは、数日で持ち直す波なのか、以前と同じ症状が週の単位で続いているのか、という違いです。続いている場合や、生活への支障が大きい場合、ご自身で判断がつかない場合は、早めに診察でご相談ください。直前に何があったかをメモしておくと、整理の助けになります。
再発した場合、傷病手当金はまた受け取れますか。
適応障害の再発で仕事を休む場合も、傷病手当金を受け取れる場合があります。会社員の方などが勤め先の健康保険にご本人として加入している場合の制度で、支給期間は支給が始まった日から通算して1年6か月ぶんです。支給されなかった期間は通算に含まれませんが、残りの日数があれば自動的に受け取れるわけではなく、働けない状態などの要件を改めて満たす必要があります。いったん治癒して相当期間働いたあとの再発は、別の傷病として扱われることがあり、期間だけで一律には決まりません。支給の可否を判断するのは加入先の健康保険(保険者)で、医療機関ではありません。くわしくは適応障害と傷病手当金の記事で説明しています。
薬は、いつまで続ければいいですか。
適応障害の治療で使う薬をやめる時期は、症状の経過を見ながら診察で相談して決めていきます。薬の種類によっては、調子が良くなったからと自己判断で急に中断すると、離脱症状や症状の再燃が起こることがあります。減らし方も薬や経過によって異なるため、自己判断で変えず、診察でご相談ください。飲み続けることへの不安や、やめたい気持ちがあるときは、そのまま診察でお話しください。減らしている途中で体調の変化を感じたときも、次の診察を待たずにお知らせください。通院をいつまで続けるかも、あわせてご相談いただけます。
数年前に適応障害と診断されました。また似た症状が出てきたのですが、受診してもいいですか。
はい、以前に適応障害と診断された方の再受診もご相談いただけます。数年たってからの再発なのか、新しいストレスへの反応なのかは、診察で経過をうかがいながら確認します。以前の通院時の情報(診断名、使っていた薬、経過)が分かるものがあればお持ちください。なくても差し支えありません。三宮駅前こころのクリニック(神戸市中央区旭通・JR三ノ宮駅徒歩4分)は土日祝も診療しており、WEB予約は24時間受け付けています。お電話(078-891-8558)でも承ります。
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